サヴォワールフェール 暗闇と光

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世界にたったひとつだけの「タグ・ホイヤー オンリーウォッチ カーボン モナコ」にスポットライトを当てます。

2年に一度開催される、高級時計メーカーが一堂に会するイベント、「オンリーウォッチ」。このイベントは資金集めを目的としたオークションで、今回で9回目を数えます。これまでに7千万ユーロ(約91億円) 以上を収益を上げ、その99%がデュシェンヌ型筋ジストロフィーの研究支援に当てられています。モナコ ヨット ショーの元CEOであり、株主でもあるリュック・ペタヴィーノ氏の発案により始まり、モナコ大公アルベール2世の後援を受けて開催されてきた「オンリーウォッチ」は、世界中の高級時計メーカーが価値ある目的のために集まり、サヴォワールフェールへのひたむきな回帰を得目指す、時計業界での画期的なイベントとなっています。

タグ・ホイヤーにとって「オンリーウォッチ」は、業界カレンダーのハイライトの一つ。それは、その目的が素晴らしいというだけでなく、ジャンルにとらわれない真のプロジェクトとしてタグ・ホイヤーの様々なチームが動員されるという側面をもつからでもあります。これによって、部門や専門性を超えて協力し合い、刺激的な新しい方法で一緒に仕事をしたり、話し合ったりし、創造性や技術的な限界を超えて進んで行くことが可能になります。言ってみれば、タグ・ホイヤーを時計の再発明に駆り立てるものなのです。

今年のオークションに出品される「タグ・ホイヤー オンリーウォッチ カーボン モナコ」の制作に当たっては、ブラック カーボンファイバーを素材とした、一生に一度だけ手にすることができる世界にたったひとつの時計をイメージし、作り上げるため、社内の専門家だけでなく、外部の協力者にも声をかけて、あらゆる手段を講じました。「タグ・ホイヤー オンリーウォッチ カーボン モナコ」とは、明確なビジョンを持った時計であり、タグ・ホイヤーの歴史と未来をつなぐものなのです。それでは、そのコンセプトとデザインを、一緒に楽しみながら見ていくことにしましょう。

総力を挙げて

どうすれば、高級時計ブランドが、時を止め、息を呑むような壮大なオリジナルウォッチを「オンリーウォッチ」オークションに出品することができるのでしょうか? それには村ができるほど多くの専門家集団、つまり、大勢の才能あるチームメンバーが必要でした。今年の「タグ・ホイヤー オンリーウォッチ カーボン モナコ」は、1970年代に発表されたタグ・ホイヤーの神秘的な魅力を放つブラックコーティングの「モナコ」(この時計とそのレガシーについては、こちらの記事をお読み下さい) をテーマに、タグ・ホイヤーの専門家たちが、その指導的なビジョンと技術で際立った活躍をしました。時計のムーブメントから、装飾、全体的な創造の方向性まで、このプロジェクトは、絶対的な完璧に向けて、優れた技能を駆使して実行されました。

「タグ・ホイヤー オンリーウォッチ カーボン モナコ」は、タグ・ホイヤーのデザイナー、エンジニア、パートナー(コラボレーションの詳細については下記をご覧下さい) が心血を注いだ数ヶ月間の献身的なチームワークによる開発作業を経て誕生したのです。この腕時計には、タグ・ホイヤーのスイス製自社製ムーブメント、「ホイヤー02」自動巻きクロノグラフが搭載されています。ハイエンドで高機能な時計製造へオマージュを捧げる、80時間のパワーリザーブを備えたスイス製ムーブメントです。

このプロジェクトによって、普段とは異なる角度から同僚をよりよく知り、協力し合うことが可能になり、刺激的で新しい創造的な高みに到達することができた、と参加した時計技師自身が語っています。

ヒューマン&テクニカル リソース

タグ・ホイヤーは、自社のコアコンピタンスであるこれまで培われてきたサヴォワールフェールを熟知しています。1860年以来、時計製造技術をより完璧なものへと開発し続けているのです。また、自分たちのサヴォワールフェールを補完するためには、どのパートナーと協力すればいいかも分かっています。

「タグ・ホイヤー オンリーウォッチ カーボン モナコ」と(もちろん、カーボンでできた) 印象的なスケルトンのダイヤルを作るために、長年のパートナーであり、高い評価を受けているダイヤルのスペシャリスト集団「ArteCad」社の協力を仰ぎました。その結果彼らは、1枚のカーボンファイバーから作り出された完璧な視認性を持つ防水フェイスを備えた、見事な構造のダイヤルを作り出しました。 「モナコ」史上初のオープンダイヤルとなったこのダイヤルは、「モナコ」のフレームの “アールデコ “スタイルにちなんだ、幾重にも重なった繊細な幾何学模様が目を引くデザインです。

また、手描きの特別なタッチを実現するため、スイスの時計産業の街、タグ・ホイヤーの本社があるラ・ショー・ド・フォンからわずか数キロのル・ロックルに、マイクロペインターの達人アンドレ・マルティネス氏がいることを見つけ出し、彼に作業を依頼しました。アンドレは、このムーブメントの唯一無二のローター(タグ・ホイヤー シールドの形をしている) に、「オンリーウォッチ 2021」のカラーにオマージュを捧げるオレンジからイエローへのシームレスなグラデーションの細い線を、手作業で描き上げました。

さらに、この時計のムーブメントに卓越の仕上げを施すために、装飾技術で業界をリードする「Artime SA」社にも参加してもらっています。「タグ・ホイヤー オンリーウォッチ カーボン モナコ」が完成するまでの手作業での仕上げは、10種類以上にも及びます。その中でも特に目を引くのが、希少な格子(エッチング) 装飾です。ムーブメントのブリッジにチェッカーフラッグのモチーフを描き出し、エングレービングが施されています。

さらに、奥行き感を出すため、このムーブメントには、アングル、ブラックポリッシュ、サーキュラーグレイン、ストレートグレイン、ペルラージュ、スネイル、サンドブラスト、シェブロン・エングレービング、サンバーストといった仕上げが丹念に手作業で施されています。これに加え、さらに25時間に及ぶ手作業による仕上げを行い、「オンリーウォッチ」にふさわしい時計を完成させました。

レーシングフラッグのデザインをハンドメイドのスクレーパーで装飾したブリッジ まず縦に削り、次に横に削ることで作り出されたいくつもの正方形が、時計を全体的に見たときに美しく光を反射します。

現在・過去・未来

タグ・ホイヤーの魅力的な時計が豊富に掲載されたカタログからインスピレーションを得て、今や伝説となっているブラックPVDケースの「モナコ リファレンス74033N」(コレクターの間での愛称は「ダークロード」) に注目しました。その結果、50年にわたる時計製造の伝統と、現代の最先端時計製造技術を融合させた至高の腕時計が誕生しました。

動きの精度を飛躍的に向上させる特徴的なカーボン製脱進機は、LVMHグループが最近開発した真の技術革新と呼べるものです。オリジナルの「ダークロード」に今回限りの再解釈を加え、このカーボンウォッチをさらなる高みへと押し上げています。

タグ・ホイヤーは、2018年の「タグ・ホイヤー モナコ バンフォード」のように、これまでも「モナコ」のケースにカーボンファイバーを使用してきましたが、「タグ・ホイヤー オンリーウォッチ カーボン モナコ」は、「モナコ」では最大となるサファイアクリスタルのケースバックをセットすることをはっきりと意識してデザインされた、他とは異なる時計になっています。

ArteCad社との共同作業によるダイヤルは、タグ・ホイヤー ウォッチの系譜にオマージュを捧げます。彼らは、フライス加工とドリル加工の技術を用いて、レーシングカーのシャーシの支柱のように時計のダイヤルに広がる印象的な形状を作り出し、現代のモータースポーツの進化にタグ・ホイヤーがなくてはならない役割を果たしていることをさりげなく表現しました。カーボンファイバー製のこのダイヤルが手作業で仕上げられているという事実が、従来のオープンワークのダイヤルと超現代的なカーボンファイバー製モデルとを魅力的に共存させています。

この時計は、先進的な考え方というレンズを通して過去を見つめながら、タグ・ホイヤーの歴史と未来をはっきりとした形で結びつけるものなのです。「タグ・ホイヤー オンリーウォッチ カーボン モナコ」のストラップを例にとって見てみましょう。これは、アイコニックな「モナコ」のメタルブレスレットを再解釈したレザーストラップで、カーブドレザーを使用しています。これは、3Dメンブレンの制作をはじめ、高度な技術工程を経て作られたもので、わずか数年前までは全く考えられない、いや、不可能なことでした。

「オンリーウォッチ」は、2年ごとに、高級腕時計を再解釈したり、作り直したりする機会を提供してくれます。「タグ・ホイヤー オンリーウォッチ カーボン モナコ」は、自らの歴史を振り返りながら、時計製造の未来にタグ・ホイヤーの姿を投影しています。

第9回「オンリーウォッチ」オークションは、2021年11月6日、ジュネーブにて開催されます。詳細は公式サイトをご覧下さい。