スポーツ 目に見えない勝利を掴む:ストップウォッチで測れないものとは

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ほんの数秒のタイム差で勝敗が決まってしまうレースでも、タグ・ホイヤーは、真の偉業が、ゴールラインや表彰台から離れた場所で、静かに、人知れず生まれるものであることを知っています。そこで今年の世界ランニングデーでは、ストップウォッチが追うタイムではなく、その数字が見過ごしがちなものに目を向けたいと考えました。それは、目に見えないマイルストーン、自分自身との闘い、自分の限界を超えようとひたむきな努力を続けること。そしてそれこそが、「Designed to Win(勝利のために)」という言葉が真に意味する勝利なのです。

シドニー・マクラフリン=レヴロン

数字だけでは語れないストーリー

街がまだ眠っている午前5時、ランナーたちのウォームアップの開始を知らせる目覚まし音を鳴らす機能など、ストップウォッチには備わっていません。足の痛みや諦めそうになる気持ちを抱えながらも走り続けた時間を、ストップウォッチが捉えることもありません。誰も見ていないところで、心の声を押し殺したり、それに耳を傾けたりする時間もまた、ストップウォッチには記録されません。表彰台や自己ベストの先には、目に見えない、内面的で、人間として最も本質的な部分から生まれる別の種類の勝利があります。

これを体現している人物として真っ先に思い浮かぶのが、タグ・ホイヤーのアンバサダーを務めるレツィレ・テボゴです。ボツワナ出身の短距離走者であるテボゴ選手は、2024年、パリで開催されたオリンピックの陸上男子200m走で見事優勝。19秒46というタイムをマークし、アフリカ新記録を樹立するとともに、祖国に史上初のオリンピック金メダルをもたらし、歴史にその名を刻みました。しかし、その驚異的なタイムの陰には、極めて内面的な成長や経験の軌跡があったのです。オリンピックを数か月後に控え、テボゴ選手は、彼の最大の理解者であり、支援者でもあった母、セラティワさんを亡くします。彼はレースで母親の生年月日を記したスパイクを履き、その勝利を亡き母に捧げました。彼の勝利は、単にライバルたちに勝ったというだけでなく、悲しみを力に変え、ストップウォッチでは決して測ることのできない絆を称えるものとなったのです。

レツィレ・テボゴ

ストップウォッチからは見えないもの

ランニングは、他のあらゆる持久系スポーツ同様、目に見えないバトルに満ちています。真の進歩は、多くの場合、フィニッシュラインから遠く離れたところ、例えば、規律ある行動が積み重ねられる中、怪我からの回復という痛みを伴う忍耐の中、誰の応援も受けずに築き上げられる静かな自信の中で起こります。そして、こうした時間こそが、公式タイムよりも、その選手を最もよく表しているのです。

世界記録保持者のハードル選手であり、タグ・ホイヤーのアンバサダーでもあるシドニー・マクラフリン=レヴロンにとって、タイムは彼女のキャンバスであると同時に試練でもあります。2023年、彼女は、軽度の膝の故障により、ブダペストで開催された世界陸上競技選手権大会への欠場を余儀なくされ、これまでオリンピックと世界陸上で勝利を総なめにしてきた彼女が経験した初めての大きな挫折となりました。しかし、彼女は、怪我からの回復と次の大会への準備に専念することで、この苦難をモチベーションへと変えます。その復活劇はまさに桁外れでした。2024年パリオリンピックの女子400mハードル走で、彼女は金メダリストのタイトルを防衛しただけでなく、驚異的な50秒37を記録し、自身の世界記録を塗り替えたのです。この数字には、日々の地道な努力、精神的な鍛錬、他人とではなく自分自身と闘うという決意といった、彼女がここに到達するまでに行ってきたことすべてが隠されています。

400mハードルではほんのわずかなミスさえも命取りになります。マクラフリン=レヴロン選手は、あらゆる挫折を、より大きな成果への糧に変えてきました。彼女がこれまで歩んできた道のりは、偉業が単に動きの中だけでなく、振り返りの中からも生まれるものであることを改めて教えてくれます。

シドニー・マクラフリン=レヴロン

生き抜いてきた時間がもたらす、真のラグジュアリー

ここで、ランニングのストーリー、そしてタイムそのもののストーリーが、一巡して完結します。
なぜなら、ストップウォッチが測れないものこそ、往々にして最も価値があるものだからです。動きと呼吸が一体化する感覚。怪我から復帰する際に踏み出す最初の一歩。タイムに関係なく、完走したときに人知れず抱く静かな誇り。こうしたものは、計測されたタイムではなく、生き抜いてきた時間こそがもたらすラグジュアリーな想いです。

タグ・ホイヤーはそれをよく理解しています。タグ・ホイヤーが高精度計時のレガシーを培ってきたことはよく知られていますが、実際にはそれよりもさらに深い信念を抱いているのです。それは、時間とはただ記録するためのものではなく、明らかにするものでもあるということ。つまり、あらゆる瞬間に至るまでの道のり、その時間の背後にある理由を称えることなのです。

TAG Heuer Connected は、アスリートに、ペースや距離だけでなく、さらに多くの情報を手にすることを可能にします。このスマートウォッチは、集中力、回復力、困難をしなやかに乗り越える力を高め、ランナーが体験するあらゆる領域をサポートするためにデザインされたツールです。信頼性の高いランニングパートナーは、数値データを計測し、記録するだけでなく、身に着ける人のストーリーを分かち合えるのです。

この世界ランニングデーこそ、ランナーがたどる道のりにおいて最も大切な部分は決してタイムで判定できるものではなく、常に内面で経験し、感じ取れるものであるという点を覚えておくべき日です。そして、この点こそが、ランナーたちを記録や時間に縛られない、普遍的な存在にしているのです。