時計 36mmパラレルの運命
Watches & Wonders Geneva 2023
3分
ロビン・スウィズンバンク ジャーナリスト・作家
私が初めて機械式時計を購入したのは15年ほど前のことになります。なにしろ時計を買うのは初めてで、未熟で、自分が持っているお金で買えるものかどうかさえ分かりませんでした。運命の時計に出会ったのはネット上でした。1960年代というデザイン性豊かな時代に作られたヴィンテージウォッチで、当時と同じように今も私の心を捉えて離さない見事な時計です。そして良かったのは、その時計を買うだけのお金を私が持っていたことでした。
数日後に届いたものの、残念なことに、私の手首にはちっとも似合わなかったのです。35mmというサイズは、当時の基準からすると小ぶりで、私にも小さく感じられました。なにしろ私は身長2メートル、手首はネアンデルタール人のように骨太で、40mm以下の時計が似合うはずもなかったのです。でも当時の私は世間知らずで、どうしてもその時計が欲しいと焦るあまり、そういった点にまでは気が回りませんでした。
時計、特にウォッチケースの大きさは、流行が周期的に変化します。私がそんなヴィンテージの誤算に陥った2000年代後半は、ケースサイズは、40mmゾーンの上位にまで到達する勢いでした。でも、縮んだように見えると言われようと、39mmサイズがほとんどの男性にとってのスイートスポットであることが今では明らかになっています。
-
タグ・ホイヤー カレラ デイト(WBN2313.BA0001)
この点に関しては、常に42mmを好む人もいれば、36mm前後のより控えめなサイズ感の方がふさわしい手首の人も多くいます。最近では、この36という数字がユニセックスウォッチのデファクトスタンダードとなり、かなり多くの人が自信をもって着用できる普遍的なサイズとなっています。ただ、私の意見は違いますが。
注意していただきたいのは、これが決して今に始まったことではないという点です。1960年代初頭、ジャック・ホイヤーはカレラのサイズを36mmに設定しました。それは彼がこのサイズを野心的な若いキャリア志向の強い人々(当時は主に男性) にとって最適だと考えたからです。
そのプロポーションでもちろん、時計としての機能も十二分に備えています。それから60年経った今でも、初代カレラのバイコンパックス クロノグラフ ダイヤルのバランスは、時計製造におけるプロダクトデザインの最も優れた例のひとつであり続けています。
この「36mmパラレル」(そう呼ばせてもらえればの話ですが) に、新しいタグ・ホイヤー カレラ デイトが登場しました。ダイヤル径36mmサイズで、シルバー、ブルー、グリーン、そして華やかに挑発的なピンクという4色のダイヤルカラーで展開されています。タイム&デイトウォッチとして、カレラのモダンなパラダイムを継承しつつ、クロノグラフ抜きに、エレガントで、どんなシーンにもマッチする、言うまでもなく親しみのあるデザインに仕上がっています。
流動的な今の時代の中で、まさに60年前にジャックが考案し、時の流れの中で多くの女性たちからも支持されたオリジナルモデルのように、この最新モデルもより多彩な人々にアピールすることになるでしょう。これは心強いことになるはずです。36mmパラレルなんてと挑まれても、もうこの時計を見捨てる理由は見つからないのですから。
ロビン・スウィズンバンク ジャーナリスト・作家