ストーリー タイムキーパーズ:フロリアン・モドリンガー

5分

タグ・ホイヤー ポルシェ フォーミュラE チームのチームプリンシパルを迎えて

1994年、まだ子供だったフロリアン・モドリンガーは、ハンガリーのハンガロリンクで初めてF1レースを生で観戦します。以来、モータースポーツは長く彼の情熱となり、それを自分の仕事にしようと強く心に誓ったと言います。ミュンヘン工科大学で機械工学を学んだ後、彼はこの夢の実現に邁進してきました。今のところ、それはかなりうまくいっています。2022年フォーミュラE シーズンの開幕直前に、タグ・ホイヤー ポルシェ フォーミュラE チームのファクトリー モータースポーツ フォーミュラE ディレクターにモドリンガーが就任することが発表されました。

私たちは今、イーストロンドンのエクセル展覧会センターにあるタグ・ホイヤー ポルシェ チームのガレージの前に立っています。2022年7月29日(金) 明日はいよいよ2022年ロンドンE-Prix。メカニックやピットクルーは、マシンの微調整やピットストップの練習に励みながら、ビッグなレースウィークエンドに向けて懸命に準備を進めています。その忙しい合間を縫い、貴重な時間を割いて、モドリンガーが私たちのインタビューに答えてくれました。彼の役割、今シーズンの状況、新しいGen3マシン、来シーズンへの展望などについて意見を伺いました。

フロリアン・モドリンガー(タグ・ホイヤー ポルシェ フォーミュラE チームのファクトリー モータースポーツ フォーミュラE ディレクター)

フォーミュラEのチームプリンシパルになるために必要なことを教えてください。

私はフォーミュラEのプロジェクト全体の責任を負っています。つまり、レースだけでなく、Gen3マシンの開発やテストも監督しているということです。必要なのは、間違いなく「情熱」です。自分の仕事に打ち込む姿勢が必要です。私はレースが好きで、モータースポーツをこよなく愛しています。でも、それだけではダメで、経験も必要です。これまで私は、様々なレースシリーズにおいて、色々なメーカーで仕事をしてきました。あらゆるところで経験を積み、より完成度を高め、日々学んでいくんです。そして、人を導き、指導し、やる気を出させる方法を学びます。大勢の人がいて、それぞれの仕事に専念しているからこそ、リーダーとしての素質もこの役割の重要な要素になるのです。でも、大変なこともあります。例えば、事故があったりして、夜を徹して働かなければならないこともあり、誰もが自分のできる限りのことをやる必要がありますし、集中力やモチベーションを保ち続ける必要もあります。また、チームをまとめ、やる気を高め、的確な指示を出すことも私の仕事の一部です。

今シーズンのこれまでの戦績をどう評価されていますか?

私は今シーズン初めにタグ・ホイヤー ポルシェ フォーミュラE チームに加わりました。良い時もあれば、悪い時もありました。リヤドでの開幕レースはあまり良くなかったのですが、メキシコでの第3戦ではいきなりワンツーフィニッシュを飾るという快挙を成し遂げることができました。チーム全員が素晴らしい仕事をしてくれました。特に予選はいいペースでした。他の2チームと一緒の予選の結果を見ると、私たちが予選でベストのチームだったことが分かります。でも、様々な理由でポイントを持ち帰ることができなかったのです。第6戦のモナコでは、パスカル・ウェーレインが優勝を狙える位置につけていて、トップにも浮上したのですが、リードしている時に技術的な問題が発生してしまいました。この技術的な問題のために、第9戦のジャカルタではグリッドペナルティーも課されてしまいました。なんだかんだ小さな問題も足かせとなり、予選で獲得できたはずのポイントを持ち帰ることができなかったのです。そこが、残り4戦の改善点であると同時に、来シーズンに向けての明確な目標にもなっています。それは、すべてを統合し、常にトップチームと同じレベルにあることを示すことです。

パドックの雰囲気はいかがですか?

最後4戦の最大の目標は、一戦一戦、自分たちの力を発揮し、ポイントを獲得できるようできる限りを尽くすということです。さらに、Gen3マシンのテストも行っています。チーム全員にとってかなりの仕事量ですが、最高の状態でシーズンを終えたいのです。しかし、すでに来シーズンとGen3マシンの開発に大きな焦点が当てられています。

 

ところで、今日、Gen3の開梱を目撃しました。来シーズンの新しいマシンに期待することは何でしょう。

より軽量のマシンになるので、パワーアップが期待できます。それだけでなく、回生能力も改善され、レースで使用されるエネルギーの40%は回生ブレーキによってまかなわれます。これによって、リアアクスルに油圧ブレーキは搭載されません。つまり、リアアクスルとフロントアクスルからの回生電力が使えるようになるわけです。これはかなりの進歩です。また、新しいテクノロジーやエレクトロモビリティに関しても、大きな一歩を踏み出すことができました。急速充電機能も導入されます。技術がいかに進化しているかを示すためにも、いかに素早く充電できるかが、強い印象を残す機能になります。

  • フロリアン・モドリンガー(タグ・ホイヤー ポルシェ フォーミュラE チームのファクトリー モータースポーツ フォーミュラE ディレクター)

Gen3マシンについてはどう思われますか?

マシンが手元に届いて、まだテストを始めたばかりなんです。最初の数日間がテストデーだったので、もうすぐ全体像を把握することができるとは思いますが。フロントのパワートレインを共通のシャシーに統合するという意味です。まだファーストインプレッションが始まったばかりです。性能試験、情報収集、アプリケーション開発、あらゆるシステムとの連携など、全ての工程作業がこれから始まりますが、私たちはそれをとても楽しみにしています。

 

チームのドライバーたちのこのロンドンE-Prixに賭ける意気込みは?

彼らはレースドライバーですから、マシンに飛び乗ってサーキットを走るのを楽しみにしています。レースチームとしても、早く始まって欲しいですよ。今日は午後からフリー走行があります。サーキットでは、様々なチャレンジがドライバーたちを待ち受けています。先程も言ってように、屋内と屋外、アップダウンもあるレイアウトで、外の高速コースでは段差も多少ありますから。マシンのコントロールを失うことも起こりがちです。大変なレースになりそうですが、ドライバーたちも楽しみにしていますし、私たちも期待していますよ。

 

レース前に行う儀式はありますか?

特にありません。私は分析型の人間で、儀式とかにこだわるタイプではありませんので。

最後に、フォーミュラEの人気が高まる中、これからフォーミュラEを見始めようとする人たちに一言お願いします。

フォーミュラEは異質です。他のどんなレースシリーズとも違います。私たちのレースは壮観です。バトルもあらゆるところで繰り広げられます。オーバーテイクも頻繁ですし、エネルギー管理をしっかりと行わなければならないという点もあります。こういった要素が、フォーミュラEを面白くて見応えのあるスポーツにしています。私たちが行うショーもファンの皆さんに楽しんでもらえるもので、フォーミュラEに親しんでもらうのにも最適なものです。

 

今日はお忙しいところ本当にありがとうございました。新シーズンも頑張ってください。

こちらこそありがとうございます。はい。頑張ります。