ストーリー タイムキーパーズ:ジュリア・パレ(フォーミュラE サステナビリティ ディレクター)

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モータースポーツをより良く、よりクリーンで、より安全なものにすることを使命として取り組むジュリア・パレに話を聞きました。

フォーミュラEの世界における真の実力者であるジュリア・パレは、世界初のオール電化レーシングシリーズのサステナビリティ ディレクターを務めています。そのパレが、2022年ロンドンE-Prix 前夜、大気環境、電気自動車の普及、フォーミュラE、そしてモータースポーツをより良く、より安全に、よりクリーンにするための使命について語ってくれました。その内容をご紹介します。

今週末のレースは楽しみですか?

久しぶりのロンドンでのレースにワクワクしています。ホームレースであるだけでなく、屋内と屋外が組み合わされたコースレイアウトもユニークですし、もちろん、マシンからの騒音が抑えられ、テールパイプからの排出ガスもゼロですから。この週末は、ライブスポーツ、エンターテイメント、コミュニティアクションの他に類を見ない組み合わせも楽しめます。今シーズンの他のどんなレースよりも、色々なことが展開されると思います。ロンドンとフォーミュラEは、都会の中心部の大気環境を改善するという同じ使命を掲げて闘っています。そして、これはロンドン市長もニューアム区長も取り組んでいる重要な課題なのです。私たちは、こうした人々の E-Prix への継続的なサポートにとても感謝しています。そして、ロンドン独自のサステナビリティや脱炭素化のプログラムを通して、この都市をよりクリーンで安全な空間にすることができればと願っています。

ロンドンのような大都市でフォーミュラEを開催することは、サステナビリティにどのように役立つのでしょうか?

世界では、90%以上の人がWHOが求める品質レベルを満たさない大気を吸っており、そうした地域の大半は都市や市街地に位置しています。さらに、汚染された大気の大部分は自動車や交通システムからもたらされているため、電気自動車化は環境とサステナビリティに多大なメリットをもたらすだけでなく、地域住民の健康にも大きくプラスに働きます。

フォーミュラEのレースは、都市がサステナビリティとモビリティの課題にいかに取り組んでいるかをアピールする素晴らしい方法です。また、電動モビリティがここ数年でどれだけ進化したかを消費者に宣伝することもできます。私たちは、電気自動車が他のクルマと同じように、あるいはそれ以上に、高性能で、スタイリッシュで、実用的なものであると示せるのです。

サステナビリティの規制は、このスポーツにどのような影響を与えていますか?

私たちは、イベントにおけるサステナビリティの国際規格 ISO 20121 に沿って、5年以上一貫して運営されている世界で唯一のモータースポーツ シリーズです。この認証はスイスの世界的な認証機関であるSGSの外部監査員によって毎年審査されていますし、私たちはシーズン1からFIAの三ツ星環境認証も取得しています。その結果、イベント会場での廃棄物管理やリサイクル、マシンやイベントの電力での再生可能エネルギーの使用、さらにはレース会場ごとに状況に合わせて用意される地域貢献プログラムなど、一貫したアプローチを採ることが可能になりました。

フォーミュラEが成し遂げた飛躍についてお聞かせください。

フォーミュラEは、私たちが気候変動と闘うためのあらゆる手段をすでに手にしており、後はただそれを大規模に実施することが必要なだけであることを示すものです。私たちは常に先陣を切って行動することを心がけています。新しいイノベーションを試したり、実施したりすることであろうと、他の選手権よりもさらに上を目指すことであろうと、私たちはより持続可能であると感じたら、どんなことでも手を抜かずに徹底的に行います。ISO 20121の認証を取得している選手権は私たち以外にはありません。2020年にスタートして以来、フォーミュラEは、ネットゼロ・カーボンを達成した世界初のスポーツとなっています。国連が推進するより10年も前です。そしてまた、2021年には、世界で初めて科学に基づいた目標に沿うスポーツとなりました。私たちはまた、ユニセフの気候変動に関するあらゆる活動における最大のグローバルスポーツパートナーでもあります。パートナーシップの初年度は、約70万人の子どもたちにポジティブな影響を及ぼしました。

フォーミュラEが直面する最大の課題は何でしょうか?

二酸化炭素排出量の90%以上は、人員の移動や貨物の輸送に関連しています。私たちのメッセージを広め、より多くの人々にインスピレーションを与えるには、世界を代表する都市でレースを開催する必要があります。私たちは、ロジスティックパートナーのサポートを受けてフォーミュラEというスポーツをグローバルに成長させながらも、二酸化炭素排出量の継続的な削減に役立つ最新かつ長期的なサステナビリティ貨物ロードマップを用意しています。バイオ燃料の使用や、空輸の代わりに海路や陸路を使った運送を行うことで排気量を大幅に抑えることの他、マルチモーダルなアプローチも採用しています。こうして、環境負荷をコンスタントに減らしていくために、技術革新を起こし、できることは全て行っているのです。

フォーミュラEのこれまでで最大の功績は何だと思われますか?

フォーミュラEは、サステナビリティのための文化を創り出し、世界的な気候変動との闘いにスポーツが担う役割を示しました。こうして最初のプラットフォームを作り上げただけでなく、レースチーム、エンジニア、その他の主要スタッフを通じて、可能性の限界を押し広げ、革新を続けています。このことはGen3マシンの登場からもお分かり頂けると思います。自動車メーカーのEV開発技術を根底から覆してしまうほどのものですから。

来シーズンに導入される予定の大きな変更はありますか?

来シーズンは、各大会での環境負荷低減のための施策をさらに充実させていきたいと考えています。私たちはまた、地域社会全体で生み出しているポジティブな影響にも自分たちの活動の焦点を合わせていきます。FIAの「ガールズ オン トラック プログラム」を例にとって説明しましょう。これは、私たちを受け入れてくれる地域社会の中で暮らす様々な社会経済的背景を持つ少女たちに、STEM教育を広め、モータースポーツでのキャリアを育成していくというものです。

フォーミュラEは、スポーツ界にどのようなメッセージを送っているのでしょうか?

フォーミュラEは、目的を持って誕生した世界初のスポーツです。最初は街路の電化を進めることが目的でしたが、それが人類のサステナブルな進歩を推し進めることへと広がっていったのです。私たちは、サステナビリティを中心に据え、全てにおいて模範を示すことでリーダーとなるよう努めていきます。その代表例が、技術、性能、サステナビリティの粋を集めたGen3マシンというわけです。

このスポーツの未来像をどのように描いていらっしゃいますか?

スポーツは、世界中でサステナビリティを推進するための手段として国連に選ばれています。つまり、スポーツを通じたサステナビリティは、何百万人ものファンに届けられ、そうした人たちの心や精神、魂に触れなければならないということです。Z世代からも、ESGランキングを通じた投資家からも大きな期待を集め、スポーツ界では目的主導の大きなムーブメントが起きています。サステナビリティは、今やスポーツ界にとって欠かせないものとなっているのです!