スポーツ フォーミュラEの豆知識(パート1) :ゲームのルール
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あらゆるスポーツがよりサステナブルな未来に向けた新しい方法を模索している今、モータースポーツは “電気” というアイデアで前進を加速させています。しかも猛烈な勢いで。それがフォーミュラE。世界初の電気のみで駆動するシングルシーターによるレーシングシリーズです。まだ歴史の浅いこのスポーツはどのようにして生まれたのでしょうか。レーシング界やレーシングファンにとって、どのような意味があるのでしょうか。どのような技術が使われているのでしょうか。どういった特徴がフォーミュラEをユニークな存在にしているのでしょうか。この画期的なチャンピオンシップの創設パートナーであり、オフィシャルタイムキーパーでもある私たちがこうした質問にお答えします。シートベルトを締めて、電気エンジンをふかしている気分で、ホットなレーシングシリーズの蘊蓄を深めてください。
2人の夢想家、1枚の青写真
素晴らしいアイデアというものは必ずどこかで始まります。今回の電気自動車によるストリートレーシング選手権というアイデアは、ナプキンに走り書きされた一連のメモがきっかけでした。場所は、パリのレストラン。日付は、2011年3月3日です。当時のFIA会長が、現在フォーミュラEの会長を務めるアレハンドロ・アガグと会食していました。ここで2人は、世界初のオール電化レーシングシリーズを実現するための自分たちの考えや青写真を語り合います。2人は一緒に「世界を代表する各都市のストリートで、モータースポーツ界の一流ドライバーたちをグリッドに並べてレースを行う」という創設ミッションをベースに自分たちのアイデアを膨らませていったのです。そしてこうしたことは全て、サステナブルなモビリティのパワーを世界に示し、よりクリーンでより良い未来への道を切り拓くことを目指していました。
フォーミュラEは、2014年、北京のオリンピック公園でデビューを果たします。以来、このスポーツは進化を続け、世界的なエンターテイメントブランドへと成長しました。モータースポーツとサステナビリティとの見事な融合です。現在のフォーミュラEは、12チーム、24名のドライバーがグリッドに並びます。このスポーツは時代精神を捉え、多くの観客を魅了しています。
ゲームのルール
フォーミュラEのルールは、F1などとどう違うのでしょうか。他のモータースポーツと似ている部分もありますが、フォーミュラEにはこのスポーツならではの新しくエキサイティングな特徴が数多くあります。ここではそれをご紹介していきましょう。
チャンピオンシップと順位
フォーミュラE世界選手権では、ドライバー部門とチーム部門の2つのタイトルを競います。ドライバー選手権では、シーズン中に最も多くのポイントを獲得したドライバーがチャンピオンに輝き、チーム選手権は、シーズンにおける両ドライバーの成績を計算して決定されるといった具合で、ここまでは、F1と同じではないかと思われるかもしれませんね。
フォーミュラE でのポイントの仕組み
フォーミュラEは、FIA公認の他のシリーズでも使われている標準的なポイントシステムを採用しています。上位10位までの入賞者にポイントが付与されます。
- 1位 – 25ポイント
- 2位 – 18ポイント
- 3位 – 15ポイント
- 4位 – 12ポイント
- 5位 – 10ポイント
- 6位 – 8ポイント
- 7位 – 6ポイント
- 8位 – 4ポイント
- 9位 – 2ポイント
- 10位 – 1ポイント
ポールポジションをキープし、そのレースでファステストラップを出せば、追加ポイントを獲得できます。
ポールポジション:3ポイント
タグ・ホイヤー ファステストラップ:1ポイント(上位10以内)
レース当日の進行
シェイクダウン
ほとんどのE-Prixで、本番の前日、金曜日にシェイクダウンと呼ばれるテスト走行セッションが行われます。ただし、コースとなる道路が空いていればの話ですが。シェイクダウンでは、ドライバーは速度を落として走行し、電子システムやマシンの信頼性を確認します。このため出力は110kWに制限されています。
フリー走行
各 E-Prix では、30分のオープニングセッションと、30分の追加セッションの2回のフリー走行が行われますが、ダブルヘッダーの2日目は30分の1回のみになります。ここで初めてタイム計測が行われ、コースの感触を確かめながら、マシンのセットアップを調整していきます。タイマーは作動していますが、その結果が最終的なリザルトに反映されることはありません。あくまで練習の場ですから。出力はセッションを通して最大250kWまで使用することができます。
予選
今年のシーズン8では、フォーミュラEのこの部分がこれまでから大幅に変更になっています。予選は、グループステージと、準々決勝、準決勝、決勝で構成されるデュエルステージの4つの段階で進んでいきます。グループステージは、ドライバー世界選手権の順位を元に22名のドライバーを11名ずつの2つのグループに分けます。各グループが、220kWの出力で10分間のセッションを行い、ラップタイムを競います。各グループの上位4名がデュエルステージに進出します。デュエルステージでは2台ずつの直接対決で勝者が絞られていきますが、先ず準々決勝では、8名のドライバーが出力250kWでタイムアタックを行います。タイムが良かった方の4名が準決勝に進出。最後2名で決勝戦となります。この決勝の勝者がポールポジションと貴重な3ポイントを獲得します。
準決勝で敗れた2名がラップタイム順に3位と4位、準々決勝で敗れた4名が5位から8位までを占めます。
グループステージの各グループの5位から12位までのドライバーがタイム順にポールポジションを獲得したドライバーが属していたグループをグリッドの奇数順位、もう一方のグループを偶数順位に割り当てます。つまり、ポールシッターがグループ1 だった場合、グループ1の5位のドライバーが、スターティンググリッドの9番目に並ぶことになり、グループ2の5位のドライバーが10番目になるといった具合で続いていきます。複雑そうに見えますが、予選を実際にご覧になれば、すぐにお分かり頂けると思いますよ。
E-Prix
今シーズンもレースは、スタンディングスタートで始まります。シグナルが青になるまでマシンは止まっています。ドライバーたちは、実際のグリッドから少し手前にあるダミーグリッドに並び、ゆっくりと整列してスターティンググリッドに移動してレースがスタートします。決勝レースは45分間。この45分が経過し、トップのドライバーがフィニッシュラインを越えても、レース終了まであと1周走ります。
レースカレンダー
フォーミュラEは、世界を代表する各都市で電気自動車による壮大なレースを開催することを目指しています。2021/22年のカレンダーには、マラケシュ、ローマ、ソウル、ニューヨーク、ベルリン、ロンドンといった都市が含まれています。全部で16のレースが行われ、最終戦までワールドワイドに駆け抜けます。
以上でパート1 は終了です。この後も、フォーミュラEの進化やフォーミュラEで使われる用語などをご紹介していきますので、どうぞお楽しみに!