サヴォワールフェール サヴォアフェール 第3章:ミクロン単位で仕上げられるタグ・ホイヤーのムーブメント

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メゾンを特徴づける並外れたサヴォワールフェールの数々を詳しく探るシリーズがスタートです。

© TAG Heuer

“メゾン タグ・ホイヤー” へようこそ。メゾンを特徴づける並外れたサヴォアフェールの数々を詳しく探るシリーズがスタートです。このシリーズでは、驚異的な時計が生まれる工房の舞台裏をご紹介します。そこでは、最初のアイデアの発案から、完璧に組み立てられた時計の最終的な研磨まで、各工程が細心の注意を払って作業されています。時計製造の職人技についてはもうよくご存じかもしれませんが、スイスメイドのマジックをすでに熟知しているあなたをも唸らせる、臨場感あふれる詳細情報が詰まったこのシリーズをお読み頂き、あなたの知識をワンランクアップさせてください。この第3章では、スイス・シュヴネでのタグ・ホイヤーのムーブメント作りを順を追ってご紹介します。ムーブメントについては、ラ・ショードフォンの本社での「ホイヤー02」自社製ムーブメントの組み立てをご紹介する次の章も準備していますので、どうぞお楽しみに。

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こうした専門的なマニュファクチュールと工房があるからこそ、タグ・ホイヤーは独自のムーブメントを製造することができ、品質管理や製品開発にも目を配り、常に卓越性の頂点に到達することを確保できるのです。 「ホイヤー02」ムーブメントの完全自社製造は、タグ・ホイヤーの技術的サヴォアフェールに対するこだわりの中でも極めて重要性が高い部分です。

ムーブメントの製造工程には一般的に複数の複雑な段階があり、シュヴネでは、その作業において常に最高の精度が求められます。この工程では、5ミクロンの精度で機械加工やフライス加工を行う真鍮部品の切削工程から、真鍮部品のエッジ部分を除去して磨き上げる「リーマ仕上げ」までが行われます。トリミング、サンドブラスト加工、マウンティング、エレクトロタイピング(別名:ガルバノプラスティ) を経て、最大70石の宝石(つまり宝石軸受) と金属部品をプレスしてセットします。シンプルですよね。

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それでは、タグ・ホイヤーのムーブメントに生命を吹き込む、それぞれの工程を詳しく見ていくことにしましょう。

まずは試作機で、新しいムーブメントの試作品を作ったり、既存のムーブメントに手を加えたりします。トゥールビヨンのような複雑機構を製造できるこの装置によって、新しいアイデアを試し、製造に必要なツールを開発することが可能になります。必要な工具を全て内製化することで、自分たちが作る部品の品質をよりしっかりと管理できるようになっていると自負しています。

私たちは、全ての段階で、品質を慎重に検証していますが、その際には顕微鏡を使うこともよくあります。また、大型のデジタルディスプレイを使って、様々な小型部品の動きを間近で確認するなど、装置の構想化からプログラミングに至るまでの全工程で緻密な品質チェックが最優先されます。

最終的に信じられないほどに複雑な構造物へと姿を変える原材料の真鍮プレートへの機械加工では、±5ミクロンという狭い範囲で動作するよう設定された6台の装置が使われます。こうして、一つひとつの動作の精度を最適化することができるのです。

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サステナビリティを高め、美しい自然環境を保護するというタグ・ホイヤーが掲げる目標の一環として、私たちは廃棄物やエネルギー消費、使用する製品が環境に与える影響を減らすために、複数の重要な取り組みを行っています。例えば、現在では、フライス加工や機械加工で残った真鍮の破片などを再利用するようになっています。また、可能な限り太陽光発電を導入しています。2016年以降、化学物質の使用量と全体的なCO2排出量も最小限に抑えています。さらに現在では、洗浄に使った中水も専門の業者に送られ、浄化・ろ過して生物学的にリサイクルされるようになっています。

サンドブラスト加工は、ムーブメントをより美しく仕上げるための工程で、表面に磨きをかけ、均一にならすことで、最終的な仕上げに備えます。しかし、この加工はかなり汚れるので、電解ニッケルめっきなどの仕上げを施す前に、広範な洗浄やクリーニングが必要です。また、部品の中には、ムーブメント全体に油が広がるのを防ぐためのバリアとして、目に見えないくらい薄い膜が塗布されているものもあります。

次に、真鍮製のプレートに様々な部品を配置します。それぞれの部品を驚くほどの精度で配置していくようプログラムがセットされ、ムーブメントが正しく機能するよう確実に取り付けられなければならない小さな穴の中で、力、圧力、位置が同時にテストされます。タグ・ホイヤーのムーブメントの約1割を対象に、約70個の部品がムーブメントに圧入されるまで、常に決められた位置からずれないことを確認するため、広範囲にわたる様々な品質検査が行われます。こうした部品は歯車やネジからシンセティックルビーに至ります。その後、ムーブメントに潤滑油が塗布されます。多くの可動部分の摩擦を減らすことで、タグ・ホイヤー ウォッチの高い効率性が維持されます。

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この工程段階の品質管理プログラムは、ムーブメントのデザインと同時に作成されます。各部品はそれぞれの時計のデザインに従って配置され、どんなに小さな部品であろうと決められた場所に寸分違わず合っていなければなりません。各時計のムーブメントに「ゼロ点」が設定され、部品が配置される深さや高さを±10ミクロンの範囲内で正確に決定します。

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全ての部品がセットされたところで、ラ・ショードフォンの本社でのムーブメントの旅は次のステージに進みます。次回は、ラ・ショードフォンの本社で、タグ・ホイヤーのシグネチャームーブメント「ホイヤー02」がどのように時計に組み込まれていくのかをご紹介します。どうぞご期待ください。