ライフスタイル タイムトラベルの未来

大きな、そして小さな画面上で過去と未来を自由に行き来する暗殺者や地球外生命体を含め、パラレルワールド、リバースエントロピー、「親殺しのパラドックス」理論などが、量子物理学の研究室の外で話題となることが増えています。あなたが生まれながらの科学オタクでない場合、またタイムトラベルに関する話をするのはこれが初めてという場合のために、超空間をとりまくいくつかの理論についてもう少し詳しくご紹介しましょう。この便利なガイドがあれば、家に引きこもってビタミンD不足になることもなく、自信をもって議論ができるほどの基礎知識を身につけることができます。

ちょっと知っているだけで賢く見える特殊相対性理論は、実はタイムトラベルを理解する上でもっとも初歩的なものです。通常、私たちは時間を、厳格な規則のもと常に「動き続ける」ものであると考えています。しかし、物理学者のアルバート・アインシュタインは、実際は時間は幻想であることを証明しました。この事実をコピペして上司にメールするのはちょっと待って。その前に、どういうことかご説明しましょう。私たちの知る時間とは、相対物です。つまりそれは、その人の空間を動く速度により異なるということです。  そして、全般的に人間は同じような速度で動いてます。そのため、あなたとあなたの上司に同じルールや計時の規則が適応されるのは、正当なのです(残念ながら！) 。

アインシュタインは、既知の空間は「4次元」であるということを明らかにしました。例えば、空間を縦、横、高さといった組み合わせの3次元で考えると、位置を特定することができます。それから、時間の概念により、人や物の場所を伝える4番目の組み合わせが加わります。いわゆる方向です。その方向は、前進しかないはずなのですが。アインシュタインの特殊相対性理論では、対象物に相対してどれだけ早く動くかによって、時間は遅くなったり早くなったりすると論じられています。架空の双子を想像してみてください。アリスとボブと呼びましょう。例えば、双子の内のアリスが光の速さに近い速度で進む宇宙船に乗り宇宙を旅するとしたら、地球にいるボブよりもアリスははるかにゆっくりと年を取ります。これは「時間の遅れ」として知られています。

もしすべての宇宙飛行士が双子であるとすれば、彼らは、地球にいる双子の兄弟姉妹よりもほんのわずかに若い状態で帰ってくることになります。ある意味、彼らはタイムトラベラーなのです。一般相対性理論もまた、重力は時間を「曲げる」ことができることを証明しています。このことを踏まえると、未来へのタイムトラベルは本当に可能なのです。この深刻な問題についてもう少しだけ掘り下げてみましょう。

時間にかかる質量の影響の例は他にもあります。科学者による実験で、高層ビルの上と下で原子時計の進みを計測するというものがあります。それによると、(地球の質量により近い) 1階に設置された時計は、最上階のスイートルームに置かれた時計よりも遅く進んだという結果が出ています。

しかし、なぜこういった時計の進み方が、タイムトラベルを可能にするのでしょうか？ 同じ原理を、もっと大きなスケールで考えてみてください。つまり、わずかな1秒の違いが、日、月、数十年と広がり、未来へのタイムトラベルへとつながるのです。

もしあなたが毎秒2億メートル（レースがお好きな方でしたら1億5千万mphと言った方が分かりやすいでしょうか）進む宇宙船に乗船することができたとしたら、明確な時間の遅れを体験することができます。でも、乗船していてもその遅れに気がつくことはないでしょう。ピーナッツをおつまみにスコッチのソーダ割りを飲み、誰にからかわれることもなく堂々と映画『パディントン2』を鑑賞して過ごす飛行機での旅行と同じような感じです。銀河系の端へと小旅行をし、戻ってきてから、地球で待っていた友人たちよりも遥かに若いことに気がつくのです。

これが、スポーツジムに通ったり、高品質の保湿液に投資したりすることの高価な代替えであるように思える一方で、この可能性には、遠大な意味があるのです。ただし、それには障害がまったくないということではありません。光に近いスピードで進むことのできる宇宙船の実現には、現状では夢物語のようなエネルギーのレベルや量が必要となるのです。

出発した場所(と時間) に戻ってくると決めた時、何が起こるでしょうか？  これには、宇宙の「スピード制限」、または光の速度を超える必要があるのです。多くの物理学者がこれを不可能であると言っています。伝説的物理学者、スティーヴン・ホーキングも同様の意見で、社会的にもそれに順ずるのが一般論になっています。しかし、過去への「近道」があると考える人もいます。それらは「ワームホール(虫の穴) 」と親しみを込めて呼ばれています(親しみ具合はどのくらい虫が好きかにもよりますが) 。

ワームホールは基本的に、2つの穴を繋ぐトンネル、時空の生地にある「破れ」のようなものです。空間の羽毛布団について覚えていますか？ では、そこに誰かまたは何かが思いきり破って穴を開けたと想像してみてください。多くの羽毛が空間へと舞います。そしてその穴から、反対側にあるもう一つの穴に手を伸ばすこともできます。その反対側では、カバーの中に羽毛布団を入れようと四苦八苦して費やした時間を取り戻すこともできるのです。あなたは少なくとも10歳若返り、今よりストレスも少ない状態に戻るでしょう。

しかし、あまりに複雑すぎて説明することができないような理由で、量子力学では、そのようなワームホールが存在したらその穴はすべて一瞬で潰れてふさがってしまうだろうと結論づけています。つまり、人間は言うまでもなく粒子さえも、その中に入り原型を保ったまま通り抜けることは、ほぼ不可能であるということなのです。ワームホールはまだ発見されていないものの、多く学者は、その存在がありうることは認めています。

ブラックホールの周りを急速に宇宙船で進む他に、その状況を巨大な回転構造で人工的に作り出すという選択肢もあります。(太陽の10倍の質量のある) とてつもなく長く深い円柱の周りを宇宙船でらせん状にで進むこともできます。宇宙船は時間のような曲線を描きます。ただしそれを行うには、光の速さに到達するようなレベルのスピードが必要となります。そんなスピードが出せたとしたら、未だかつて達成したことのない偉業となるでしょう。しかし、少なくとも理論上は、これでタイムトラベルが可能になるのです。

物理学者のスティーヴン・ホーキングは、「その周りを回れば、回るほど、ブラックホールから遠く離れた人々の半分ほどの時間しか経験していないことになる。その宇宙船と乗組員は時間を超えて旅をするのだ」と言っています。つまり、宇宙船が経験する5年の年月が、地球の10年となるのです。

これは古典的な問題で、タイムトラベルのSF映画でよく出てきます。主人公がある使命を果たすため過去や未来へと送られ、特定の出来事に関わること、自分自身に目撃されること、または祖父を殺害することなどがないよう指示されます。一連の出来事に関われば、例えば、母親が生まれる前に祖母が亡くなれば、その主人公が生まれてこなくなるかもしれません。(その場合、主人公は突然姿を消すのでしょうか？) それとも人生自体がまったく違うものになってしまうのでしょうか。

スティーヴン・ホーキングは、過去にタイムトラベルすること自体を起こらないようにすることで、時間は守られると理論づけています。タイムトラベラーはパラレルワールドに入ると仮説を立てる学者もいます。パラレルワールドとは、宇宙で独自のルートに沿って発展します。量子力学の多世界解釈と一致するものです。軽粒子または「光子」が一定となる傾向にあり、それらが非道で自滅的なスキーマを防ぐ効果を発すると主張する学者もいます。

こうした時の冒険の話が、少し大変すぎるように思えたり、考えただけで頭が疲れてしまうなら、もっと簡単な方法でタイムトラベルを楽しんでみましょう。あなたの4次元の羽毛布団に身を包んでください(念のため言うと、あなたのベッドにある羽毛布団のことです。4次元に存在しているのです) 。そして、毎秒1秒の心地よいペースで時空を旅をしませんか？

ワイルドな気分であれば、スピードを毎マイクロ秒1マイクロ秒に変えてみましょう。計時を正確に行うため、あなたのインターステラーの旅に、例えばタグ・ホイヤーのクロノグラフのような、信頼性の高いツールをお供にして出発しましょう。見た目にも美しく、ワープスピードで経過する分を計測できます。

冗談はさておき、驚くべき事実として、タグ・ホイヤーのクロノグラフは、毎日のタイムトラベルを完璧に計測することができます。あなたがレースコースで人間の最速記録を破るにしても、ニューヨークからロンドンまで夜通し大西洋を横断するにしても、あなたのスピードが、実際に計測可能なわずか1秒がもたらす影響によって時間を遅らせることとなるのです。あなたが実年齢よりも若く見えるのはそういった理由からかもしれません…。

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