TAG Heuer レーシングスピリットを物語る生きたアーカイブ

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ラ・ショードフォンにあるタグ・ホイヤー 本社の一角で鼓動を刻み続ける、タグ・ホイヤー ミュージアム。数十年にわたり、ブランドが紡ぎ続けてきたモーターレーシングの歴史を物語るアーカイブです。

タグ・ホイヤー ミュージアムには、4,000点に及ぶタイムピースの唯一無二のコレクションが、ヘルメットや写真、さらにはオリジナルのスライドと共に展示されています。その一つひとつが、スピードとヘリテージの歴史を物語る重要な断片です。ミュージアムの中に足を踏み入れると、チャンピオン、エンジニア、コレクターたちをつなぎ合わせるストーリーが、モータースポーツと時計製造のシームレスな結びつきを生き生きと感じさせます。

レジェンドたちのタイムピース

このアーカイブでスポットライトが当てられているのは、それを着用した人たちにとって、切っても切り離せない存在となったさまざまなタグ・ホイヤー ウォッチ。1971年公開の映画『栄光のル・マン』で主演のスティーブ・マックイーンの腕元を飾ったことで不滅の存在となった、ホイヤー・モナコ 1133B。映画出演により、このタイムピースのアイコニックな地位が確固たるものになりました。その隣には、スイス人ドライバー、ジョー・シフェールを彷彿とさせる、ホイヤー オータアヴィア 1163。クールなカリスマ性をもつシフェールはタグ・ホイヤー初のアンバサダーとなり、彼が愛用するオータヴィアは、シフェール オータヴィアの愛称で呼ばれるようになりました。

また、1992年に発表された、タグ・ホイヤー フォーミュラ1 片山右京モデルのような希少モデルも展示されています。そのレッド、イエロー、ブラックのエネルギッシュな組み合わせは、片山が所属していたF1チーム、ラルースのチームカラーを反映した色彩です。元々製造数が少なかった上に、片山がチームを移籍した時点で製造が終了となったため、今でも最も希少性の高いタグ・ホイヤー フォーミュラ1のひとつであり続けています。そして、クレイ・レガツォーニの相棒として名を馳せた、ホイヤー シルバーストーン。「モナコ」のエッジをソフトにした後継モデルであり、1970年代を象徴する大胆なブルーを纏っていました。

こうしたアーカイブタイムピースは、モーターレーシングのアイデンティティを封じ込めたタイムカプセルです。それぞれがその時代に流した汗、手にした勝利、そして悲劇を宿しています。

ヘルメット、ヒーロー、ウォッチ

アーカイブでは、ヘルメットと並んでウォッチを展示し、ストーリーをより鮮明に語り掛けています。レガツォーニのホイヤー シルバーストーンは、彼の赤地に白十字のスイス国旗が描かれたヘルメットと共に展示され、フェラーリレッドのマシンを駆った果敢なドライビングを鮮やかに蘇らせます。シフェールのホワイトダイヤルのホイヤー オータヴィアは、パドックとピットレーンをスタイリッシュに繋いだ男の思い出を呼び起こす、シフェール自身のヘルメットの隣に置かれています。

こうしたウォッチとヘルメットの組み合わせの中には、モーターレーシングの現代史を彩る瞬間を思い起こさせるものもあります。例えば、ボーダフォンのロゴが入ったルイス・ハミルトンのヘルメットは、F1デビューの2007年に、彼が見事に飾った初優勝の記憶を呼び戻します。この時、マクラーレンの若きドライバーであったハミルトンの腕元には、鮮やかなオレンジの「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 クロノグラフ」(Ref. CAH1113) が輝いていました。そのすぐそばには、ミカ・ハッキネンのホワイトとブルーのヘルメットが、タグ・ホイヤー 6000シリーズ クロノグラフと並んで展示されています。このウォッチは、彼の2度の世界チャンピオンを共に飾っています。ウォッチとヘルメットを合わせた展示は、かつてサーキットを席巻したヘルメットとクロノグラフに刻まれた、フォーミュラ1(Formula 1®) の人間ドラマを再現しています。

  • クレイ・レガツォーニのホイヤー シルバーストーン

アイルトン・セナと S/el の絆

タグ・ホイヤーのレガシーを語る上で、アイルトン・セナほど大きな存在感を放つ人物はいません。このアーカイブには、ブラジル人レジェンドであるセナの写真やスライドだけでなく、彼とブランドとのパートナーシップを物語るウォッチも収められています。1980年代後半にセナが愛用していた、タグ・ホイヤー S/el クロノグラフ(Ref. S25.706C)は、エディ・ショッフェルがデザインした特徴的な「ダブルS」ブレスレットを備えた最先端のクォーツクロノグラフでした。

セナは、シャンパンやアンスラサイトといった異なるカラーのダイヤルを備えたさまざまなタイプのS/el クロノグラフを使い分けており、いずれのモデルにも彼の揺るぎない威厳が宿っていました。セナは、S/el をチームのリチュアルの一部にさえしました。1993年、この年にタイトルを獲得したら時計を交換しようとリードメカニックのロン・ペラットと冗談を言い合ったセナは、シーズン終了時にチャンピオンシップを獲得できなかったにもかかわらず、約束を守り、自身のS/el をペラットに贈ったのです。セナとタグ・ホイヤー S/el クロノグラフほど、ドライバーと時計の深い結びつきを物語るものは他に見当たりません。

アーカイブが語る、セナのスライド

このアーカイブの中で、おそらく最も感動的な展示物は、ウォッチそのものではなく、アイルトン・セナを写したオリジナルのカラースライドかもしれません。パドックでの飾らない表情、表彰台での祝福の瞬間、レース前の集中したひとときといったポートレートの数々には、レジェンドと呼ばれた男の一人の人間としての姿が捉えられています。彼が愛用したウォッチと並んで展示されているスライドは、タグ・ホイヤーと、モーターレーシング界で最も偉大なアイコンのひとりとの絆を伝える生きた証です。

  • アイルトン・セナ(1992年)