時計 タグ・ホイヤーのウォッチラバー ユニバーシティ:面白いほどよく分かる腕時計百科事典

パート2:ムーブメント

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タグ・ホイヤーの時計製造にまつわる話に出てくる「それって何?」と思うことが多い用語の意味を、時計を解剖しながら明らかにしていくシリーズ。答えを知りたくてたまらなかった疑問にお答えします。それではまず、アパーチャーからゼロ設定まで、ここでしっかりと時計に関する用語を整理してみましょう。

これまで時計について、無知をさらけ出すことを恐れてついつい聞きそびれてしまっていたことをここで解決しましょう。友だちがトゥールビヨンを比較する話をしている時に、彼が話していることが、フランスの新しいチーズのことなのか、それともV8エンジンの話なのかなどと、あれこれ悩む必要もなくなります。今こそ、私たちが用意した時計製造に関するFAQや専門用語の数々を集めたこの百科事典で時計用語に精通する時です。ここには、全くの初心者にも目の肥えたコレクターにも役立つ時計用語が網羅されています。「学び続ける人はいつまでも若い」と言われるように、腹筋に効く運動器具はちょっと横に置いて、代わりに頭脳を鍛えていくことにしましょう。このシリーズで勉強すれば、すぐに、毎日の会話の中で、受け石(ジュエル) にはどんな石を選べばいいのか、あるいはベゼルとは何なのか、などと聞かれて、当意即妙の答えができるようになるはず。そこには、時計用語を母国語のように流暢に操るあなたがいます。時計の話をする際に必要となる用語を網羅したこのフレーズブックをぜひご活用ください。

16世紀初頭に発明されて以来、機械式時計は、その中で鼓動する優美なムーブメントを生み出す精緻なクラフトマンシップによって、人気を集め、賞賛の的となってきました。今回はそんな時計のムーブメントについて探っていくことにします。ムーブメントとは何か、その役割、知っておくと役に立つムーブメントにまつわる用語などをご説明し、時計ファンの皆さんがよく抱く疑問にもお答えします。その後、タグ・ホイヤーの自社製ムーブメント「キャリバー ホイヤー02」についてもご紹介したいと思います。

そもそも「ムーブメント」とは何でしょうか?

時計のムーブメントは「キャリバー」とも呼ばれ、あらゆる時計の鼓動する心臓です。この精巧な内部機構が、針の動きからクロノグラフ、アラーム、カレンダー、その他の複雑機構に至るまで、時計の全ての機能を駆動させます。機械式ムーブメントは、ゼンマイと歯車が複雑に噛み合い、エネルギーを高精度に制御された動きに変換します。これによって、時計が効率良く作動し、時間の経過を正確に刻んでいくことが可能になります。ここでは、美しいプラチナ製ケースのことも、個性的なダイヤルのことも、ヴィンテージのアリゲーターストラップのことも忘れてください。ムーブメントはまさに時計のリアルな “心臓” であり、通常は舞台裏に隠れています(ムーブメントが見えるように透明なケースバックやダイヤルの時計もあります) が、

ほとんどの時計職人、そして多くの時計愛好家にとって、ムーブメントは単なる時計の “エンジン” 以上の存在です。何百年もかけて培われたサヴォアフェールによって作り上げられた傑作時計のムーブメントは、製造技術における芸術品に匹敵するほどの高いエレガンスを備え、偉大なる美しさを湛えるオブジェとさえ言えます。

ムーブメントには様々な種類があるのでしょうか?

簡単に言うと答えは「はい」で、自動巻、手動巻、クォーツの3種類があります。クォーツウォッチは、バッテリーや太陽電池を電源とし、一定の周波数で振動する水晶(クォーツ) 振動子によって時刻を調整します。ただし、ここでは高級時計に使われる、より複雑な2種類のムーブメントである、自動巻ムーブメントと手巻ムーブメントに焦点を当てることにします。

手巻ムーブメント

手巻ムーブメントは、時計を作動させるために、通常1日に1回、時計を手で巻き上げる必要があります。時計のムーブメントの中で最も古く、最も伝統的なものであり、熟練の職人技が光ることから、多くのコレクターに愛されています。手巻ウォッチも自動巻ウォッチも、ケースバックがシースルーになっていることが多く、内部のムーブメントの精緻な美しさを堪能することができます。

手巻ムーブメントはまた、時計を動かすのに、バッテリーではなく運動エネルギーを使います。リューズを回すとエネルギーが発生し、そのエネルギーが主ゼンマイに伝達されます。主ゼンマイが巻き上げられる中で蓄積されるこのエネルギーは、歯車とゼンマイを通して放出され、時計の機能や複雑機構を駆動させます。

自動巻

自動巻ムーブメントは、手巻ムーブメントと似てはいますが、いくつかの重要な違いがあります。自動巻時計は、身に着けている間、運動エネルギーを利用して自動的に巻き上げられます。このため、定期的に着用していれば、手で巻き上げる必要なく動力を維持することができます。例えば、タグ・ホイヤーのキャリバー ホイヤー02は、80時間という驚異的なパワーリザーブを備えています。ただし、この時間が経過してしまうと、時計を着用するか、動かして巻き上げる必要があります。自動巻の時計はまた、手巻の時計に比べて、機能させるために必要な部品が増えるため、厚みや重さが増すことが一般的です。

自動巻ムーブメントは、手首の動きによって巻き上げられます。振動する錘(ローターとも呼ばれます) が軸回転することによって主ゼンマイ(時計のエネルギー源) が巻き上げられ、パワーリザーブに動力を充填します。時計の調速機はテンプで、1秒間に平均4回振動します。

自動巻ムーブメントは70個以上の部品で構成され、最も小さい部品となると髪の毛ほどの厚さ(0.07mm) しかありません。こうした機械式部品の全てが継続的に調和して機能し、秒針は、クォーツウォッチのようにカチカチと動くのではなく、スイープ秒針として流れるように動きます。クォーツ・ムーブメントと比べて精度の面では劣るものの(月差数分) 、自動巻ムーブメントは、スイス時計製造の卓越性と伝統をこの上なく形に表したものです。

ところで、さっき出た「パワーリザーブ」って何ですか?

パワーリザーブとは、タイムピースまたはクロノグラフがリューズを巻き上げることなく機能し続けるために蓄積される動力の量のことです。タグ・ホイヤーの自動巻ムーブメントは、キャリバー ホイヤー02の80時間、ホイヤー02Tの64時間というように、長時間のパワーリザーブを備えています。でも、やはり重要なのは時計を身に着けて、動かし続けることです。自動巻ムーブメントは、手首の動きで巻き上げられ、動力を最大レベルに保つ仕組みとなっているため、十分な手首の動きがない場合は、ムーブメントのパワーリザーブが減少し始め、やがて時計は止まってしまいます。リューズを時計回りに回すとゼンマイが巻き上げられ、通常動作に十分なパワーリザーブが得られます。でも、愛着のある時計なら常に着用して、動かしておく方が楽しいと思いませんか?例えば、ディナーを楽しみながら、さりげなく手振りを交えて時計を巻き上げるといった具合に。

ムーブメントについて話をする時に知っておいた方がいい用語としてはどういったものがありますか?

  • リューズ:時計の側面にある突起した部分のことで、これを回すことによって時計が巻き上げられ、時刻を設定することができます。

 

  • ゼンマイ:渦巻状の部品で、リューズを回して発生した運動エネルギーがここに伝達され、蓄積されます。このゼンマイが巻き上げられるほど蓄積されるエネルギーが増え、時計を駆動させることが出来る時間も長くなります。

 

  • ギアトレイン:ゼンマイがゆっくりと巻き戻されていくと、輪列の嚙み合った一連の歯車を通して蓄積されたエネルギーが脱進機に放出されます。

 

  • 脱進機(エスケープメント):エネルギーの放出を制御し、一定速度で歯車が回転することを確実なものとする機構。時計が発生させる独特のカチカチという音は脱進機からのもので、その音の一つひとつがテンプへのエネルギー伝達を表しています。

 

  • テンプ:時計の心臓部であり、ムーブメントが規則正しく時刻を刻むことを可能にする部品。時計を高精度に作動させるには、テンプの振動数(ビート) を高くする必要があります。

 

  •  ディスプレイギア:精密に制御されたテンプからの回転を時計の針に伝える部品。これにより、針が適切な間隔で動き、正確に時間を刻むことができます。

 

  • ローター(回転錘) :ローターとは、重い金属でできた部品で、両方向に自由に回転します。ゼンマイは複数の歯車でつながっています。手首を動かすとローターが回転し、自動的にゼンマイを巻き上げます。ゼンマイが完全に巻き上げられると、内蔵されたクラッチが作動し、それ以上巻き上げられるのを防ぎます。