ストーリー タイムゾーン:4800キロが1つのタイムゾーン

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タイムゾーンの関係で、ユニークな存在となっている遠く離れた場所をご紹介します。

中国のような広大な国土の国には、複数のタイムゾーンがあるだろうと想像するのが普通です。ところがさにあらず。中国全土は (ほぼ) 同じ現地時間なのです。これは、日々の暮らしにどのような意味を持つのでしょうか。

朝食にサンドイッチを4つ。邪険に鳴り響く目覚まし時計。なかなか起きられない朝。食事が進むと夕食の皿が枕のように見え始めます。世界中を旅するどんなに勇敢な旅行者にも時差ボケはつきまとい、あるタイムゾーンから次のタイムゾーンに移ると、うっすらと (あるいははっきりと) 体調不良に気付かされます。もちろん国境を越えたり、経度が数度変わったりしたからといって、必ずしも “体内時計” に支障が出るわけではありません。でも、ひとつの国の中で、東西に長距離を移動したとすると、どんなことが起こるでしょうか?

それでは最初から説明しましょう。タイムゾーンとは、同じ標準時が使われている地域のことです。ここまでは、分かりやすいですよね。理想的に抽象的な世界にある「地球」は、24のタイムゾーンに分けられ、それぞれが経度15度かっきりの範囲にあり、隣のタイムゾーンとは1時間ずつの差になっています。

各タイムゾーンの時刻は通常、協定世界時 (UTC) からのオフセット (差) で決まり、UTCは本初子午線 (経度0度) が基準となっています。UTC+1は東経15度まで、UTC+2は東経30度まで… というように0から東に15度移動するごとに1時間が加算されます。なぜこのような訳の分からない数値になっているかというと、太陽が各ゾーンの空で最も高くなるのが正午頃だからなのです。そこでは、数学と幾何学という抽象的な世界と、生きているという極めて有機的で人間的な生物学とが、エレガントにリンクしています。私たちは物を見るために、作物を栽培するために、必要な栄養素を摂取するために、そして睡眠サイクルを調整するために、光を必要としています。

でも、時間が中央集権的な概念体系に支配され、空を通過していく太陽から解放され、より広い統一された時間帯になったとしたら、どうなるのでしょうか。

アメリカとほぼ同じ面積であるにもかかわらず、中国のタイムゾーンは1つしかありません。理論的には、地球上での広がりから中国は5つのタイムゾーンにまたがっていますが、公式には中華人民共和国ではどこにいても時刻は同じとされています。

西はパキスタンとの国境から東は東シナ海まで約4800kmもの距離で広がる中国は、経度で60度以上、UTCオフセットはUTC+5からUTC+9までの5つの理想タイムゾーンを持つ国です。

でも、中国国内を移動中に時計のダイヤルに手を触れる必要はありません。どこにいても、時刻はUTC+8、それが国際的に中国標準時 (CST) として知られているものだからです。中国国内ではこれを「北京時間」と呼びます。マカオと香港の「特別行政区」も、この国の他の地域と同じUTCオフセットが設定されています。

でも、ちょっと時計の針を戻してみましょう。1918年頃から1949年までは、中国には5つのタイムゾーンがありました。それが、崑崙 (UTC+05:30)、新彊 – チベット (UTC+06:00)、関索 – 四川 (UTC+07:00)、春園 (UTC+08:00)、長白 (UTC+08:30) です。しかし、1949年、毛沢東共産党主席が、中国全土で北京時間を使うことを決定します。

ただし、ある省では、北京時間だけでなく、独立したUTC+06:00ゾーンを維持し、2つのタイムゾーンを並行して使い続けています。新疆時間 (ウルムチ時間) は、国の最西端に位置する地理的状況から、北京時間より2時間遅れています。一方で、北京で午前7時であれば、公式には新疆も午前7時ということになります。ですから、北京から約3,200キロ離れた新疆ウイグル自治区の首都ウルムチでは、たとえ月がまだ輝いていても朝ということになります。

現在、新疆ウイグル自治区の街によっては、テレビ局が番組内容に応じて異なるタイムゾーンで番組を編成するなど、両方のタイムゾーンを同時に使用しているところもあります。中国のチャンネルは北京時間で番組が編成されていますが、近隣のウイグルやカザフのチャンネルは新疆時間に合わせています。

当然ながら、このように2つのタイムゾーンが混在することは、混乱の元となることがあります。計画を立てるにしても、新疆時間か北京時間かを必ず指定し、時には、相手の民族性に合わせて時間を換算することも必要です。

新疆ウイグル自治区で北京時間を使っている人々は、中国東部に住む人たちよりも2時間遅れて日常生活のスケジュールを立てるのが普通です。新疆の店舗やオフィス、職場は北京時間の午前10時から午後7時まで、つまりウルムチ時間の午前8時から午後5時まで開いていることが一般的で、新疆ではこの間を「仕事と休息の時間」と呼んでいます。さらに事態を混乱させるのが、自治体が真夏の猛暑を避けるために、午前を30〜60分早め、午後を30分遅くして、昼休みを1時間程延長させることです。

このようなタイムシフトは、文字どおり (そして比喩的にも) 頭痛の種になります。ウルムチのゴミ収集作業員、ガオ・リーさんは「この状況に慣れるのは容易なことではありません。真夜中に夕食を食べるのは、ここに住んでいる私たちぐらいなんだろうなぁなんてよく思うんです」と語ります。電車も学校も空港も通常では閉まっているときに動いているし、夜中に国家試験を受けなければならない学生もいます。夜中の3時に夕食を食べなくてはならないとしても、ご心配なく。レストランはちゃんと営業していますから。

でも、もしあなたが新疆ウイグル自治区に行くことになったとしても、時刻にとまどいそうだと心配する必要はありません。カレラ ツイン タイム、アクアレーサー GMT、オータヴィア GMTエディションを初めとするタグ・ホイヤーのGMTモデルがあれば、どちらの時間にも同時に対応することができるからです。1950年代、パイロットが離着陸時に2つのタイムゾーンでの時間を計測するために元々開発されたタグ・ホイヤーの「ツインタイム」機能が、複数の時間を即座に表示することを可能にします。例えば、タグ・ホイヤー オータヴィア GMT COSC (Ref. WBE511A) では、4本目の針を独立してセットすれば、ベゼル上で2つ目タイムゾーンの時刻を確認できるだけでなく、ベゼル自体を回転させて3つ目のタイムゾーンの時刻を確認することも可能です。ですから、タグ・ホイヤーのツインタイムがあれば、先に行き過ぎることも、遅れることもなく、現地の時刻に合わせて自信をもって行動できるのです。