時計 高精度な計時の重要性

8分

アンガス・デイヴィス Escapement Magazine.com 共同創設者

今回は、タグ・ホイヤー フォーミュラ1 × マリオカート リミテッドエディション クロノグラフ キャリバー16について知っておくべきこと全てをご紹介します。

タグ・ホイヤー フォーミュラ1 × マリオカート リミテッドエディション クロノグラフ (CAZ201E.FC6517)

経過時間計測の歴史

タグ・ホイヤーは、時間の経過を計測するために開発された有益な複雑機構である「クロノグラフ」とは、切っても切れない関係にあります。同社のストーリーは、エドワード・ホイヤーが「振動ピニオン」という発明で特許を取得した1887年に始まります。横方向のカップリング同様、この装置は、クロノグラフを瞬時にスタート・ストップさせることを可能にするもので、セピア色の時代に考案された発明であるにもかかわらず、現在も使われています。

ホイヤー(タグ・ホイヤーの旧社名) は、長年にわたり、ストップウォッチやクロノグラフを使った高精度な時間の記録を任されてきました。スポーツ大会の計時、射撃の距離計算、さらにはパルスメーターの目盛りを使った患者の心拍数の判定など、その用途は多岐に渡ります。

どんな時にも信頼できる、際立つ高精度

1914年、ホイヤーは懐中時計に代わる使い勝手の良い初の腕時計式クロノグラフを発表します。ちなみに、ストップウォッチとクロノグラフの違いは、後者が実際の時刻も表示するところにあります。やがて、ホイヤーは、電子計時の先駆者となり、70年代初頭にはフェラーリに採用された伝説的な「センチグラフ」を生み出します。

確かに、F1以上に熾烈な競争が繰り広げられるスポーツはそうありません。マシン同士が、ホイールとホイールをぶつけ合いながら、猛スピードで何度もしのぎを削る。必然的に、1位と2位、成功と失敗の差はコンマ何秒かで決まることがほとんどです。ホイヤーは、このハイオク仕様の世界から遠く離れたことはなく、常にドライバーの手元に寄り添い、信頼性が高く、抜群の精度を誇るタイムピースを提供し続けてきました。

タグ・ホイヤー フォーミュラ1 × マリオカート リミテッドエディション クロノグラフ (CAZ201E.FC6517)

フォーミュラ1 コレクション

F1といえば、期待に胸を膨らませながらピットを後にし、ミリ単位の精度で頂点を極めた者が、最終的に1位でゴールするイメージがあります。1986年、タグ・ホイヤーがこの名を鮮やかな色彩の新しいコレクションに採用したのは、この最高峰のモーターレースにインスパイアされての決断でした。ただしその歴史を振り返ってみると、驚いたことに、当初のフォーミュラ1は3針モデルだったのです。しかし、それからわずか数年後、このスイスを代表するアヴァンギャルドなブランドから、レースマニアを狂喜させるフォーミュラ1 クロノグラフが発表されます。

遊び心満載のリミテッドエディション

そして今、フォーミュラ1 コレクションに新たな仲間が加わりました。これほど豊富なバックカタログを持つウォッチメーカーとしては意外なことですが、今回の仲間はこれまでとはかなり異質のものです。タグ・ホイヤー フォーミュラ1 × マリオカート リミテッドエディション クロノグラフ は、タグ・ホイヤーというウォッチブランドの膨大なサヴォアフェールを余すところなく活用し、フォーミュラ1のデザイン要素を取り入れながら、その全てを遊び心と融合させています。実際、このモデルの名前からも分かるように、今回の新作にはマリオカートに因んだ特徴が多数盛り込まれています。

マリオカートは、任天堂株式会社が制作した歴史あるゲームシリーズで、登場したのは1990年代初頭。様々なピクセルキャラクターたちが、楽しさ満載のバトルを繰り広げ、発売以来、多くのゲームファンを夢中にさせてきました。マリオとその仲間たちがカートに乗って、スピード感あふれるアクションを繰り広げます。現実であれ想像の世界であれ、レースの計時を担当するのはいつでもタグ・ホイヤーのようです。

もっと詳しく

ダイヤルには、グランプリの勝利をイメージさせるチェッカーモチーフを採用。時針と分針はロジウムプレート、ファセット加工、高度なポリッシュ仕上げで、ホワイトのスーパールミノバ®のラインが入っています。先端を切り落としたような形ですが、すっきりとしたデザインで視認性は抜群です。ロジウムプレートのインデックスは、上部が湾曲し、ダイヤル中央に向かって下に傾斜し、ここにも夜光塗料が塗布されています。

レッドのセンタークロノグラフ針は、先端にホワイトの夜光塗料が塗布され、ダイヤルの外周を囲むレッドのトラックと対話するかのように進んでいきます。6時位置に12時間計、9時位置にスモールセコンド、12時位置に30分計と、3つのクロノグラフレジスターがダイヤルを彩ります。クロノグラフの両レジスターはホワイトのサークルで縁取られ、スモールセコンドはレッドの細い縁取りで他の部分と分けられています。そのスモールセコンドにはカートに乗ったマリオの姿が。また、3時位置の窓には、キラーやバナナなどを始めとするマリオカートの様々なアイテムが時折顔を出し、それを見れば、どんなに不機嫌なときにも思わず笑顔になるはずです。

タグ・ホイヤー フォーミュラ1 × マリオカート リミテッドエディション クロノグラフ (CAZ201E.FC6517)

44mm径の大型ケースなので、ダイヤルの多彩な要素をハッピーに共存させるだけの十分なスペースがあります。確かに、つぶれたり、栄養不足になったりしているものは見当たりません。ベゼルはステンレススティール製で、傷のつきにくいセラミック製のインサートが付き、タキメータースケールとマリオカートのロゴがあしらわれています。また、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げの洗練された組み合わせも、このベゼルの特徴です。2つの仕上げが明確に区別できる状態を維持しなければならないため、両者を組み合わせることは容易なことではありませんが、タグ・ホイヤーは堂々とそれを実現させています。この2つの仕上げの組み合わせは、ケースの他の部分にも及び、ラグジュアリー感を醸し出しています。

2時位置のプッシャーには、モータースポーツならではの2つの特徴である興奮と情熱を象徴する、燃えるようなレッドのリングがあしらわれています。リューズもこのデザインを踏襲していますが、4時位置のプッシャーには色が入っていません。タグ・ホイヤーのファンなら、リューズの垂直面にタグ・ホイヤーのおなじみのロゴが入っていないことに驚かれるかもしれません。その代わりに、タグ・ホイヤー × マリオカートの両モデルにしかない特徴として、レッドラッカーでカスタマイズされたマリオのシンボルMマークがリューズを飾っています。

ケースバックには、カートに乗ったマリオとMARIOKARTのロゴを刻印。上部には「Limited Edition」の文字も刻まれ、このモデルが限定エディションであることを確認させる仕上がりになっています。4本のネジでケースバックを固定し、最適な配置を確保しています。堅牢なケースバックの下には、スイス製機械式ムーブメント キャリバー16がメトロノームのような高い精度で時を刻んでいます。質感のあるブラック カーフスキンのストラップには、エンボス加工による模様とレッドのライニングが施されています。

タグ・ホイヤー フォーミュラ1 × マリオカート リミテッドエディション クロノグラフ (CAZ201E.FC6517)

計時は常に責任重大

最高峰のスポーツ界で戦うために、アスリートやドライバーは、起きている間は常に、自分のスキルを磨き、人間としてのパフォーマンスを最大限に発揮することに専念しなければなりません。同様に、モータースポーツチームは、ドラッグ、グリップ、パワーの最適化に多大な時間を費やします。そのため、プレッシャーのかかるサーキットでは、1位と2位の差、時にはコンマ数秒の差を見極める仕事は責任重大になります。

その歴史を通じて、タグ・ホイヤーは、常に計時の重要性を認識してきました。現場に立ち会うこともしばしばで、ピットで見かけることも多く、このスイスのウォッチメーカーは、歓びと落胆の瞬間を目の当たりにしてきています。タグ・ホイヤーは、ドライバーやアスリートが見せる成功へのこだわりを高く評価し、計時が責任重大な仕事であることを片時も忘れることはありません。

新登場のタグ・ホイヤー フォーミュラ1 × マリオカート リミテッドエディション クロノグラフ は、愛すべきキャラクターを称えるだけでなく、タグ・ホイヤーの伝統とサヴォアフェールに敬意を表し、さらに高精度の計時を重要視し続けていることへの決意を改めて示すモデルでもあるのです。

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