ポッドキャスト ポッドキャスト エピソード9:沈思黙考のフリーダイバー、アルトゥール・ゲランボエリ選手

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今回のポッドキャストでは、フリーダイビングの世界記録保持者であるフランス人のゲランボエリ選手が、スポーツ・セラピー、幸福の飽くなき探求、映画『グラン・ブルー』から受けたインスピレーションなどについて語ります。

「The Edge by TAG Heuer」のシリーズでは、可能性の限界で活躍している非凡な人々とのトークを繰り広げます。ここでは、参加することと勝利を手にすることとの紙一重の違いが語られます。それは、私たちにエッジ(優位性) を与えてくれるものは何なのか、そしてそれを超えるために何ができるのか、ということでもあります。

今回のゲストは、豊富な知識に裏付けられた興味深いトークも魅力のアルトゥール・ゲランボエリ選手です。

ニース生まれのゲランボエリ選手は、子どもの頃、家族と一緒に水中で “魚と戯れる”休日を過ごしました。やがて、そこで体験した心の安らぎをきっかけに、想像しうる最も過酷な環境下での、精神的な回復力を高め、肉体的な難題を克服するスポーツに挑戦するようになります。

2012年にフリーダイビングに取り組むようになると、わずか1年後には初の世界選手権タイトルを獲得すると同時に初の世界記録も樹立してしまったのです。ゲランボエリ選手は、現在、6つの世界記録と5つの世界タイトルを持つ、世界で最も成功したフリーダイバーのひとりに数えられます。彼は凍結湖潜水遊泳の世界最長記録を保持しています。この大記録は、2021年3月、フィンランドのソンネン湖に張った氷の下を一息で120メートル泳いだことで達成されました。フリーダイビング以外では、海洋保護のために闘う団体「Longitude 181」にも関わっています。

今回私たちは、次の “パーソナル チャレンジ”に向けて準備に余念のないゲランボエリ選手をインタビューしました。この挑戦は、2022年にカナダでダイナミック フリーダイビングのもうひとつの世界記録達成を目指すというものです。この啓発的な意見交換の中で、ゲランボエリ選手は、精神的な回復力やハードなトレーニング ルーティン、そしてフリーダイバーにとってのメインツールがなぜ時計なのか、などについて語ってくれました。

ポッドキャストが利用できるお使いのツールで「The Edge TAG Heuer」と検索し、フルエピソードをお楽しみください。

こちらでも聴くことができます。

 

ポッドキャストの目的、それは、リスナーの自分の限界を取り払うために、後押しとなること。

注意:お急ぎですか?

ここで、スタートラインに立ちエンジンを暖めるためのインスピレーションをつかんでください。是非聴いてみてください! そして、ポッドキャストに登録するのをお忘れなく。後でエピソード全体を聴くことができます。

グラン・ブルー

月並みな言い方ですが、『グラン・ブルー』という映画を見て、大きな衝撃を受けました。映画の中で主人公が海の中に潜った時に描かれている感情が、とても詩的で、現実や彼が頭で考えていることからは超絶していて、まさに私が水中で感じていることだったんです。ですので、この映画を見た時に、もしかしたらこれは私がもっと真剣に関わるべきことかもしれないと思いました。それはまだ私が10歳か12歳くらいの頃でしたが、10代の間ずっと頭の中にこびりついていました。

爆発的人気のスポーツ

インターネットで水泳のコーチを探していた時に、「私がやりたいのはフリーダイビングだ」とふと思ったのです。そこで、クラブでプロのコーチと一緒にフリーダイビングをやる方法はないかと探してみました。そんなものを検索をする間の抜けた人間は自分くらいしかいないだろうとタカをくくっていたのですが、「パリにあるフリーダイビングのクラブ」で検索してみたら、なんとフリーダイビングが爆発的な人気になっているスポーツであることが分かったんです。

カラダにも、ココロにも

フリーダイビングは多くの人たちがやってみたいと憧れるスポーツです。ヨガや太極拳、瞑想などをやりたがる人は後を絶ちませんが、フリーダイビングもこうした人気のあるアクティビティのひとつになってきています。誰もが「カラダにも、ココロにもやさしいこと」といった特集記事を雑誌で読んだことがあるはずです。それでヨガや瞑想を試してみるのですが、飽きてしまう。で、何か新しいことがやりたくなる。そんなわけで、今やフリーダイビングは、フランスの大都市ではトレンディなスポーツです。パリにはフリーダイビングクラブのないスイミングプールはひとつもありません。

飽くなき探求

特に今の社会では、すべてが非常にアグレッシブで、何でもかんでも競争であるため、人は常に幸福の飽くなき探求といった状態にあります。プライベートでも仕事でも、常に優れたパフォーマンスを発揮するよう求められるので、心の充足を求める必要性と欲求が高まっています。だからこそ、フリーダイビングのようなスポーツが大いに人気を博しているのだと思います。

ブリージング エンヴィ

ここまで長く息を止めている場合に習得しなければならないのが、精神的な微調整ができるようになることで、これがストレスにどう対処するか、逆境にどう立ち向かうか、回復力や自信などに直接影響を及ぼします。これは、とてもユニークなメンタルトレーニングです。極めて原始的な生存反射である “ブリージング エンヴィ”(呼吸したいという衝動) を克服することでもあります。メンタルなプロセスとして、例え初心者レベルであってもダイビングを始めると、これが日常生活に非常に素早く影響を及ぼします。

フリーダイビングが私を救った

フリーダイビングを始める前の私は、パリでとても都会的な生活をしていましたが、暮らし心地は決して良くなかったですね。すごいストレスを感じていて、心配事が多くて、あれやこれや気になって。それが私をこのスポーツに戻らせたんです。フリーダイビングに救われました。それだけは間違いありません。

完全集中

[水の中はどんな感じなのかと聞かれ] 圧迫感があって、一面ブルーで、暗くて、寒くて… 自分や自分の感覚に完全に集中しています。水の上のことや、そこでの生活や、それに付随するものと完全に離れた別世界にいて、今この瞬間を生きているっていう感じです。水中に潜ると、とても落ち着きます。

何も聞こえないほど集中

[ダイビング前の準備について聞かれ] 準備には2時間かけます。ストレッチをたっぷりやって、イメージをどんどん膨らませていきます。自分のパフォーマンスをイメージするんです。自分が泳ぐ予定の場所と全く同じ氷の下を泳いでいる自分を自分で “見る”わけです。それを何回か繰り返して、これから起こることに備えて気持ちを整えるんです。息を止める練習もしっかりやります。その練習が終わった時には、催眠状態になっています。何も聞こえないほど、すごい集中しています。恐れも、不安もなく、ストレスも感じません。自分の目標だけに完全に集中できています。

自分の鼓動を聞きながら

凍った湖の氷の下は、とても、とても不思議な世界です。こんな静けさを体験できるのは、地球広しと言えどもここだけです。ちょっと恐ろしいくらいです。周りに全く音がありませんから、何でも聞こえます。水の中での自分が動く音、肌の上を滑る水の音、自分の鼓動まで。何でも聞こえます。

パーソナル チャレンジ

ダイビングを自分の生活と切り離して考えることはできません。自分のキャリアは、自分がやっていることを中心に展開しようとしているものです。そのキャリアには、世界記録への挑戦以外にも、タグ・ホイヤーのために撮影しているドキュメンタリーや、カンファレンス、メディアなど、さまざまなプロジェクトが含まれ、そうしたもの全てが私のキャリアになっています。世界記録への挑戦の方が、もっとパーソナルなものですね。

そろそろ時間だ

息を止めると言うのは、時間に関わるものです。ですから時計が、フリーダイバーにとって必要なメインのツールになります。フリーダイビングは、時間の経過にも関わっています。そして、深さにも、距離にも関わりますが、基本的には時間に関わることなのです。