時計 蓄光性ダイヤルの魅力
3分
デイヴィッド・チャルマーズ 『Calibre11』設立者&編集者
タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300 ナイトダイバー(WBP201D.FT6197)
今年初めに登場した「アクアレーサー プロフェッショナル300」シリーズは、1982年にその起源を遡る「タグ・ホイヤー アクアレーサー」シリーズの歴史に加わった最新の1章だ。2000シリーズと呼ばれたこの1982年モデルは、ジャック・ホイヤーの指揮下で発表された最後のシリーズであり、Ref. 844から始まった1970年代後半からのタグ・ホイヤーにおけるダイバーズウォッチの遺産を引き継いでいる。2021年の「アクアレーサー」コレクションには、「タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル 300 Ref.844 トリビュート」や、「タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル 300 ナイト ダイバー」が含まれている。
タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300 ナイトダイバー(WBP201D.FT6197)
「ナイトダイバー」の歴史を紹介する前に、まずはこの新しい時計を詳しく見ていくことにしよう。「タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル 300 ナイトダイバー」は、43mmのスティール製ケースにDLC(ダイヤモンドライクカーボン) コーティングを施し、ブラックの外観に仕上げている。このDLC処理は、ケースだけでなく、リューズ、ケースバック、フォールディングバックルにも施されている。この “フルブラック” 仕上げが、通常のステンレススティール製「アクアレーサー」と比較して、より個性的な外観を時計にもたらしている。オールブラックの外観と鮮やかなコントラストを描くのが、ホワイトのスーパールミノバ®を塗布したオパーリンのダイヤル。同じホワイトのスーパールミノバ®が時針と分針にも施されている。一般的なダイバーズウォッチでは、針やインデックスにスーパールミノバ®が塗布されており、暗闇で光を放つ。だが「ナイトダイバー」は違う。ダイヤル全体が光るものの、アワーマーカーの中には夜光塗料がコーティングされていないものもあり、そうした部分は光っているダイヤル上では暗く見える。これが「ナイトダイバー」の名の所以で、通常のダイヤルよりもダイヤル全体の輝きを強めたデザインになっているのだ。
タグ・ホイヤーがこのアイデアを初めて採用したのは、蓄光性ダイヤルを備えたダイバーズウォッチ シリーズを発表した1983年のこと。当時のカタログには「どんなときにも、たとえ夜間のダイビングでも、最適な時計」と謳われている。2021年の「ナイトダイバー」同様、カーキ色のケースやフルブラックのケースなど、様々な仕上げのケースがラインナップされていた。共通点はそれだけで終わらない。と言うのも、2021年の「ナイトダイバー」のダイヤルレイアウトも、1983年のシリーズの特徴である、8つのブラック サーキュラー アワーマーカー、3つの蛍光アワーマーカー、12番目の位置を占める日付表示用のスペースを踏襲しているからだ。
タグ・ホイヤーの「ナイトダイバー」シリーズは、1980年代に大人気を博し、そのクラシックなケースデザインとユニークなダイヤルによって、今でもコレクターの熱い視線を集めている。最近では、1987年公開の映画『007 リビング・デイライツ』で、この時計の1つ(Ref. 980.031) が着用されていたことが判明し、コレクターの間で話題になっている。高額な企業スポンサーの時代になる前のことであるため、タグ・ホイヤーが直接時計を提供したのではなく、この映画のプロデューサーたちが地元の時計販売店から自分たちで時計を調達したと考えられている。ティモシー・ダルトンが、ロマンスとボンド流マティーニを楽しもうとしているところへお決まりの邪魔に入る、もう一人の悪役の子分をやっつけるシーンで、手首にこの時計のトレードマークである蓄光性ダイヤルがちらりと見える。この一瞬のシーンから腕元の時計がタグ・ホイヤーの「ナイトダイバー」だと分かったのも、そのシグネチャーデザインである個性的なダイヤルがあったからこそ。タグ・ホイヤーが最新の2021年モデルでもこのデザインを継承しているのにも頷ける。
2021年の「アクアレーサー」のダイヤルは、1980年代の大胆なオリジナルモデルと同様の特徴を備えている上、どんな秘密工作員でも喜ぶであろうモダンな特徴も加わっている。洒落たタッチを添えているのが、新たにデザインされたブラックのラバーストラップ。タグ・ホイヤーが新たにデザインした、微調整を可能にするフォールディングバックルが組み合わされている。バックルの側面にある2つのプッシュボタンを押すことで、バックルがスライドして手首にぴったりとフィットするよう調節できるという仕組みだ。使い方は簡単で、夏場に時計をよりリラックスフィットに装着させたいときなどに、実用性を大いに発揮してくれる。この新しいラバーストラップのデザインは、ブレスレットの代わりとして、あるいはブレスレットに加えて、「アクアレーサー」の全モデルに順次採用されていく。また、1980年代のオリジナルウォッチは一般的にバッテリー駆動のクォーツムーブメントを搭載していたが、2021年の「アクアレーサー ナイトダイバー」は、スイス製の自動巻ムーブメント「キャリバー5」を搭載している。
タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300 ナイトダイバー(WBP201D.FT6197)
タグ・ホイヤーが「アクアレーサー」シリーズの開発を続ける中で、いかに多くの新作時計が1970年代から80年代の有名なダイバーズウォッチからインスピレーションを得ているかを知ることは、嬉しいことだ。それが「ナイトダイバー」であろうと、「Ref. 844 トリビュート エディション」であろうと、実に鮮やかなオレンジを選んだ最近の「バンフォード アクアレーサー」であろうと、タグ・ホイヤーは、自らのヘリテージを称えるものが「モナコ」「オータヴィア」「カレラ」といったシリーズだけではないことを認識している。タグ・ホイヤーには、革新的なダイバーズウォッチの豊かな歴史がある。「ナイトダイバー」は、最新「アクアレーサー」として、クラシックなモデルの優れた点を取り入れながらも、とことんまでモダンに仕上げたダイバーズウォッチなのだ。
タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300 ナイトダイバー(WBP201D.FT6197)
デイヴィッド・チャルマーズ 『Calibre11』設立者&編集者