時計 潜水:より深く潜る

ジュリー・ゴーティエとともに、フリーダイビングの極意に迫りましょう。

6分

スキューバダイビングを楽しみつつも、“次のレベル”、つまり呼吸装置を外して冷たい水中へ潜ることをもっと知りたいと思いませんか? 私たちは、スリルを求める人々や冒険者と同様に、極地を調査し、そこに(というよりは水中に) 存在する感覚を伝えます... 私たちと一緒に、水中アスリートのジュリー・ゴーティエからフリーダイビングの実態を学びましょう。

タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300(WBP201B.BA0632) を着用するジュリー・ゴーティエ

深呼吸:フリーダイビングとは何か?

O.G.ダイビングメソッド、フリーダイビング(息止め潜水やスキンダイビングとも呼ばれる) は、スキューバダイビングの器材や酸素などの呼吸装置を使わずに潜水することです。  ただ大きく息を吸って、止めるのです。  でも、口で言うほど簡単なことではありません。  酸素供給の限界に加え、周囲の高い水圧にさらされることで、生理学的影響を受け、えらのない人間が潜れる深さや持続時間が制限されます。しかし、だからと言って人は挑戦をやめることはないのです。

古代世界まで遡ると、減圧症から一時的な意識喪失まで、現在と同じ問題に直面したダイバーの記録が残っています。古代ギリシャで潜水夫達は、スポンジや珊瑚、真珠などを海底から採取するため、エーゲ海に深く(正確には約30m) 潜水できるように、重い錘を使用していました。

タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300(WBP208B.BF0631) を身に着けたジュリー・ゴーティエ

ジュリー・ゴーティエ

才能か、努力か?

このスポーツを始めた理由を、ジュリー・ゴーティエが語ってくれました。レユニオン島で、槍を使った潜水漁をしていた父親のもと育った彼女。子供時代は海辺で父親と釣りをしていたと言います。

 

「水が大好きになったのはその時のことです。10代のとき、フリーダイビング競技会なるものがあることを知り、このスポーツにのめり込みました。ちょうど、自分の価値を世間に証明したいと思う年頃だったんですね。11歳からダイビングをしていたので、すぐに上達しました」。

 

しかし、残念ながら 呼吸のコントロール法を“生まれながらに”身につけていないと、後の人生で学ぶべきことが山ほどあります。  フリーダイビングのトレーニングは、水中でできるだけたくさんの時間を過ごし、体力や身体の持久力をつけることから始まります。そして、肺活量を増やすために、胸郭を広げて横隔膜を緩める特別な練習へ続きます。呼吸法と集中することが大切なヨガでさえ、日々のトレーニングのメニューとして役立つのです。

健全なる身体に健全なる精神

ダイビングの成功に求められることは、身体の持久力だけではありません。精神の持久力も鍛える必要があります。  実際、フリーダイビングの技術は心身の健康に大きな効果をもたらすことができると、ゴーティエは述べています。「これまでのフリーダイビングを通して、自分自身を乗り越える方法を学び、自分の限界を知り、自分の身体や心をケアする方法を学んできました。スポーツを通して自分のコンフォートゾーンから出ていくことは、より自信を身につける助けになります。結果として、日々の生活のなかで同じことを行うことが習慣になります。自分の失敗を受け入れ、成長や進化のためにそれを活かすことも学びます。また、水は人のペースを否応なしにスローダウンさせます。人生においても同じく、ペースダウンするはとても良いことなんです」。

タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300(WBP208B.BF0631) を身に着けたジュリー・ゴーティエ

シーンを心に描く

酸素がなく視界も不明瞭な波の下でたった一人になる、ということはどのような感じでしょうか? 想像に反して、特にこのチャンピオンの心に浮かんでくるものはあまりないようです。ジュリー・ゴーティエによると、それは悪いことではありません。

« 私は水中にいるときは何も考えません。その瞬間だけ生きている完全な静けさに満ちた時間です。自分の思考の重ささえも消えてしまう無重力状態の時間です。 »

そして、呼吸を我慢しつつ禅のような無我無心に到達しようとするフリーダイビングが自分のためになるか疑問に感じたなら… もう一度考えてみてください。  安全を維持しつつ 不快に抵抗するという生まれつきの本能をなだめることは、確かに綱渡りのようです。体の要求に屈したり抗ったりするタイミングというのは、それぞれの経験を通して学ぶべきもの。他のスポーツと同様に、「上達すればするほど、徐々に自分のことがよく分かります。快適と感じる深さまで潜り、一日一日とメートルを伸ばしていきます。肺をよりうまく使えるように呼吸法を学び、体の警告サインである痙攣が起きたり、受け入れることを学びます。ただし、痙攣は徐々に起こります」。

タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300(WBP208B.BF0631) を着用するジュリー・ゴーティエ

海水でレモネードを作る

ゴーティエは、これらのレッスンを地道に学びました。ダイビング中のミスとして、彼女は、前回の大会中に、圧力に抵抗することにあまりに気を取られたため、自分の感覚を無視してしまったことを教えてくれました。これによって不運な出来事が連鎖的に発生し、あまりにも無茶をしすぎたため、最終的に競技失格となりました。失敗によって思いとどまることのない彼女は、以来、このスポーツとの関係を見直し、彼女の水に対する愛と、波の下に存在する美しさを表現した映像の制作という、新しいクリエイティブな試みを始めました 。

この向上心に燃えるアスリートの記憶に残るダイビング体験は、トロフィーや時間と全く関係ないものも多くあります。最も心に残る体験は、海の生物との出会いだそう。「ドミニカ共和国沿岸のシルバー・バンクでのダイビングで、初めてザトウクジラに出会ったんです。最初は、その大きさに圧倒されました。ザトウクジラと目が合うと、まるで魔法のようでした。コミュニケーションを取っているようにアイコンタクトできたんです。ザトウクジラは非常に知能が高く、彼らが水と完全に調和して穏やかで優美に泳ぐ姿を見ると、自分がとても小さく感じます。

タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300(WBP201B.BA0632) を身に着けたジュリー・ゴーティエ

ジュリー・ゴーティエへの一問一答 -

身体トレーニングや食事のルーティンは?

JG:人生で最も大切なことはバランスです。ヨガや水泳、ハイキングを多少行ったり、健康的な食事を摂ります。でもときどき、健康的ではないものを食べてしまうこともあるんですけどね。ルーティンは作らないようにしています。たいていの場合、自分がやりたいことをやるんです。

世界中で一番潜ってみたい場所は?

JG:フリーダイビングのスタイルで漁をする日本の海女さんと一緒にダイビングをするのが夢なんです。男性の職業に従事するとても強い女性のコミュニティで、水との関係が私の場合ととても似ていると思います。

(この競技における) あなたの一番の師は?

JG:父親です。

一番向上させたい能力は何ですか?また、一番誇りに思う能力は? 

JG:柔軟性が私の強みです。高い順応性が得られ、優美になれます。

ダイビング中はどのように時間を感じますか?ゆっくり、それともあっという間? 

JG:水中では、すべてがスローダウンします。動きも、時間も。

どうやって時間を測りますか?経過時間を知ることはどれくらい重要? 

JG:水中にいるときは、時間が命です。その瞬間の時間を示すツールが、非常に重要になってきます。ほんの数秒が、生死を分けることだってあるんです。

精神的なことや哲学的なことで伝えたいことはありますか? 

JG:時間と空間は相互に密接に関係しています。水中では、時間はスローダウンし、空間は際限なく広がります。水のリズムに身を任せれば、夢に到達できます。

なぜ挑戦をするのですか?

フリーダイビングを学ぶことには無数のメリットがあります。ある人には精神的バランスや強さをもたらし、ある人には美しい水中世界への逃避になります。多くの支持者が、困難に立ち向かったり、本気で取り組んだり、冒険する能力や、自信、ストレス管理に影響を与えると述べています。競技者は(ゴーティエなどのチャンピオンアスリートも) 、ひと呼吸だけで最高深度や時間、距離を競う、様々な「アプネア競技」(一般人とっては「息を止める」こと) に参加することができます。興味がありますか? 現在、よく「健康的な」スポーツと言われるフリーダイビングは、深い内観が要求される競技です。自分の身体や心の声を聞き、ある種の強さや能力を高めることが要求されます。これをマスターしたときには、(ジュリー・ゴーティエが言うように) 夢を叶えることができるのです。