時計 トゥールビヨンについて知りたかったことや、今まであえて聞かなかった ことのすべて

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トゥールビヨン、それは、しばしば誤解されることもある、重力に逆らうための高級時計の機構です。トゥールビヨンがどのような働きを担うのか、そしてタグ・ホイヤーがどのようにこの機構に革新を起こしてきたか、見て行きましょう。

トゥールビヨンとは何か?

「トゥールビヨン」は“つむじ風” という意味のフランス語です。映画ファンなら、フランソワ・トリュフォー監督の『突然炎のごとく』でジャンヌ・モローが歌う“つむじ風(Le tourbillon de la vie) ” を思い出すのではないでしょうか。

時計製造の世界では、トゥールビヨンは“コンプリケーション” と呼ばれます。コンプリケーションは、単純に時間を表示する以上の機能です。

トゥールビヨンは1795年、伝説的な時計職人アブラアム=ルイ・ブレゲの発明により誕生しました。当時腕時計はまだ流行っておらず、ブレゲが導き出したソリューションは主に懐中時計に使われました。通常懐中時計はポケットの中で縦方向になり、ムーブメントが重力に対して真逆の力を必要とするかたちになります。バランスホイールやヒゲゼンマイなどの繊細な計時部品は、その影響を受けやすいことが問題でした。そこで、ムーブメントを包み込みメカニズムの動作にかかる重力を軽減するトゥールビヨンを使い、正確な時間を刻めるようにしたのでした。

トゥールビヨンの働き

時計は、動きの力を利用して時間を刻みます。ブレゲのトゥールビヨンは、ムーブメント全体を脱進機またはケージの中に設置し、ケージそのものに動作を与えることで、その動きを調整するものです。ケージは、まるで惑星の軌道のように、60秒毎に1回転し重力を効果的に分散します。

トゥールビヨンに含まれる部品

18世紀後半に発明されてから、1980年代に人気を呼び現在に至るまで、トゥールビヨンは大きく進化しています。 例えば、タグ・ホイヤーのキャリバー ホイヤー02Tのトゥールビヨンは、59もの正確な部品で構成される複雑な機構です。

トゥールビヨンの価値

トゥールビヨンは高い価値をもち、多くの場合高価です。なぜなら、この機構が信じられないほど複雑だからです! 多くの繊細な部品から成り、その組み立ては、特別にあつらえたツールを駆使して手作業で行われ、何時間もの細かく集中的な作業を要するのです。

腕時計が重力の影響を受けにくくなった現在では、トゥールビヨンの実用性は低くなっていますが、高級時計においてはその美しさと機能的な複雑さを与えるものとして扱われています。

トゥールビヨンとフライングトゥールビヨンの違い

現在の時計製造の世界には、多くの種類のトゥールビヨンが存在します。通常のトゥールビヨンは、ウォッチケースとムーブメントをつなぐブリッジをもっています。それに対してフライングトゥールビヨンは、一点のみで固定され、トゥールビヨンケージが浮かんでいるかのように見えます。複数の軸で回転するジャイロトゥールビヨンや、複数のトゥールビヨンを搭載している高級時計もあります。

タグ・ホイヤーとトゥールビヨン

ラグジュアリーウォッチの値段を引き上げる機構として知られている、美しく複雑なトゥールビヨン。2016年、革新的で現代的な時計製造技術により、タグ・ホイヤーは、トゥールビヨンを搭載した最新のスイス製高級クロノグラフ(ブザンソン天文台およびCOSCの認定を取得) 、カレラ ホイヤー02Tを発表しました。そのムーブメントは28,800 振動/時の振動数で動き、フライングトゥールビヨンを備えています。

でもちょっと待って。懐中時計を使わないのに、なぜトゥールビヨンを持ち続けているのでしょうか?

現在のトゥールビヨンは実用的な用途よりも美的目的のために採用されています。ウォッチに機械的な美しさと複雑さを授ける要素なのです。