ライフスタイル 東京の意外な楽しみ方

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新しい旅先の過ごし方を提案するシリーズへようこそ。

世界最大のメトロポリスとして知られる東京。まさに探索するのに何年もかかるほどの迷宮です。何年もかかっても、奥深いところはなかなか見えて来ないかもしれません。そんなに時間をかけてはいられないあなたへ、東京のにぎやかな街中に隠されている、知られざる秘密の穴場をご紹介。このガイドで、ひと味違った東京の一面をご覧いただけます。ありふれたお寿司やお花見のことしか知らない人に、思わずにんまりしながら、ちょっと自慢したくなりますよ。

 

もみくちゃにされても我慢して!

目的地に向かって公共交通機関に飛び乗る前に知っておいて欲しい重要なことがあります。それは、押し込まれることを覚悟する、ということ。東京では、ラッシュアワー、特に朝の通勤時間帯に、信じられないほどに詰め込まれた満員電車の扉に挟まった乗客やその荷物を車内に押し込むために「押し屋」と呼ばれる人が雇われます。後ろから強く押された時には感謝するのが最も礼儀正しい対応の仕方です。

 

江戸時代の浮世絵師・鈴木春信(すずきはるのぶ) が描いた凧揚げの浮世絵

空高く

中央区の、レストランが入るビルの上階にある、ちょっと風変わりな珠玉の博物館。  このレストランの創業者が生涯をかけて集めた数千点の凧が、壁に並び、陳列ケースを埋め尽くし、天井に所狭しと揚がっています。  インドネシアの葉の凧や、巨大な木版の侍が描かれた江戸凧から、家庭用の発泡スチロール製レプリカまで多岐にわたる、紛れもない世界最大の凧のコレクション。日本の伝統的な芸術を堪能できるこの博物館は、個人の趣味が高じて一般に公開してしまうという日本のよくある慣習を、息を呑むような面白さで表現している場所です。

  • 凧の博物館 〒103-0027 東京都中央区日本橋1丁目12−10

 

我が亡き後に洪水よ来たれ

洪水に備えて(あるいは珍しい建築物を単に鑑賞するために) 、埼玉県にある「首都圏外郭放水路」と堅苦しい名前が付けられた場所を訪れてみてはいかがでしょうか。俗に「地下神殿」と呼ばれるこの場所は、訪れる人を驚かせる、圧巻の空間。実は巨大な「サージ」タンクで、2006年に完成した世界最大の地下治水施設です。東京・首都圏は中途半端なことはしないのです。説明文だけでは興味がわかない場合は、YouTubeで関連動画を1~2本見て下さい。きっと訪れてみたくなるはずです。この場所で撮影されたミュージックビデオや写真から、最悪の事態には何が起こるかを驚くほど詳しく説明してくれるガイドツアーまで、この空洞の神々しい別世界のような雰囲気がひしひしと伝わってきます。

  • 首都圏外郭放水路 〒344-0111 埼玉県春日部市上金崎720

 

首都圏外郭放水路(埼玉県春日部市) 撮影者:Dddeco

冷蔵庫の中へ

東京は公式には、230店のミシュラン星付きレストラン(うち13店はほとんど予約不可能な三ツ星) がある世界一の食通の街。ですが、高級レストランが立ち並ぶ場所でなくても、驚くほどに感動的な食事体験が楽しめます。グルメな冒険には、新宿三丁目の飲み屋街を抜け、知る人ぞ知る「馬刺居酒屋 竜ノ介」を目指してみるのはどうでしょう。ここは、ホルモン鍋、串焼き、馬刺しが名物で、肉食が好きな人にはたまらない居酒屋です。雑居ビルの壁にある小さな案内板を確認したら、階段を上って2階に行くと、なんと冷蔵庫の扉が。その扉を開けて冷蔵庫の中に入ると、昭和レトロな雰囲気が満喫できる隠れ家的居酒屋が現れ、「ホルモン鍋」(豚のホルモン、キャベツ、豆腐だけのシンプルな鍋) の美味しそうな香りが漂ってきます。『タイムアウト東京』のレビューによると、この鍋は、「シンプルな料理だけれど、信じられないぐらい美味しく、クセになる味」とのこと。

  • 馬刺居酒屋 竜ノ介 〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目7−7 十字屋ビル 2階

 

日本茶のひととき

定番の東京観光でお勧めしたいのが、日本の伝統的なお茶の世界を体験するというものです。300年の歴史を持つ日本茶を専門とする老舗が運営するこの店では、試飲をしながらお茶を選び、ゆっくり日本茶の買い物が楽しめるだけでなく、抹茶を初め様々なお茶のテイクアウトサービス(ホットでもアイスでも) もあり、日本茶の魅力を多彩な角度から発信しています。店内をそぞろ歩き、日本茶の良い香りに包まれるだけで幸せな気分に浸れます。1717年に京都で創業された一保堂茶舗。その丸の内店には喫茶室も併設され、お茶を淹れるところから楽しめます。午後のひととき、日本茶の味わいを心行くまで堪能してはいかがでしょうか。お茶に合わせて出される和菓子も絶品。皇居への道すがらのエネルギー補給としても、あちらこちらを訪れた後、ほっと一息つきたいときにもぴったりの場所です。

  • 一保堂茶舗 東京丸の内店 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3丁目1−1 帝劇ビル 1階

 

喫茶室「嘉木」で楽しめる抹茶と和菓子 写真提供:一保堂茶舗

コンビニがディスコに

パーティの準備はいいですか? 東京で運を味方につければ、毎月開催されるDJイベントにも参加できるはず。お腹が空いている場合は、同時にホテルに持ち帰るためのスナック菓子もここで調達しましょう。この一風変わったコンビニでは、月に一度、深夜のDJセットが催され、場所がどこだか知っている人なら誰でも参加できます。魅力いっぱいの様々な人々が集うこのイベントでは、地下の落ち着けるラウンジに食べ物(1階で買える軽いおつまみだけではなく) も用意され、カバーチャージでソフトドリンクなら飲み放題、アルコール類も4杯まで飲めます。秘密がしっかり守られているので、開催場所を特定するのは容易なことではありませんが、手掛かりは特別なツイッターアカウント(@kishinoyuichi) に。 この穴場については、隅田川の近くにある古いレコードが並ぶ店先の裏手に隠れているとしか、ここでは申し上げられません。悪しからず。

 

いい湯だな

はしゃぎすぎて筋肉痛になってしまったら、黒湯にゆったり浸かってリラックスしませんか。この温泉の黒褐色は、天然のフミン(土壌腐植) 酸によるものと言われ、関節の痛みを和らげ、血行を良くし、美肌効果があります。その上、水面下3cmまで手(または他のもの何でも) を浸けただけで見えなくなってしまうほど色が濃いので、人前で服を脱ぐことに慣れていない恥ずかしがり屋さんでも、一度お湯に浸かってしまえば何も恐れることはありません。東京で魅惑の温泉体験が楽しめる最高の銭湯のひとつが、蒲田駅の南側、東海道線と京急線に挟まれた閑静な住宅街にあります。一見何の変哲もないように見えても、実は東京で最高と言っても過言ではない、嬉しくなるほどに昔ながらの銭湯なのです。

ゆっくりとお湯に浸かった後は、ラウンジエリアでのんびりとした時間を過ごし、日本酒とおつまみを注文して、カラオケで盛り上がるのはどうでしょう。

  • 黒湯の温泉 ゆ〜シティー蒲田  〒144-0052 東京都大田区蒲田1丁目26−16

 

 

エスパス タグ・ホイヤー 銀座

最後に

観光をして、音楽に合わせて踊り、日本茶をたっぷり飲み、銭湯の熱いお湯と熱燗で筋肉をリラックスさせたら、銀座にあるタグ・ホイヤーのブティック(〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目7-16) に足を運び、楽しんでいる時には時間がいかに早く過ぎてしまうかを実感して下さい。