スポーツ ドキュメンタリー『SUNNY BOY』:凍える水の中を進むアルトゥール・ゲランボエリの姿を捉えたモーガン・ル・フォーシュール監督作品
3分
これまで2年半にわたり、タグ・ホイヤーとALMOフィルムのチームは、ニース出身のセンセーショナルなフリーダイバー、アルトゥール・ゲランボエリの旅を追いかけてきました。そしてフィルムクルーは、アンダーアイスフリーダイビングの記録を単に1度だけでなく2度も打ち破ることを目指したアルトゥールの肉体的にも精神的にも過酷な準備の様子を捉えたのです。
その結果が、カナダやフィンランドの湖に張った氷の下や、ニースやパリの見慣れた水辺へと観る人を誘う、魅惑的な55分のドキュメンタリーです。フランスで最も成功を収めたフリーダイバーの驚異的な偉業を記録するために数か月を費やしたモーガン・ル・フォーシュール監督は、この撮影が「私たちにとって未知の領域だった」ことを認めています。
『SUNNY BOY』のストーリーは、同じくフリーダイビングのチャンピオンであり、アルトゥールの友人でもあるギヨーム・ネリーが仲介した、ル・フォーシュール監督とアルトゥールとの出会いから始まります。
「私は以前、ギヨームとコラボしたことがあり、偶然アルトゥールのSNSを見つけて、興味をそそられました」とル・フォーシュール監督は言います。「アルトゥールは、アンダーアイス無呼吸遊泳記録を2つも更新しようと決心していました。これは一呼吸でどれだけ長い距離を泳ぐことができるかを競う種目です。ウインタースポーツ映画で知られるALMOフィルムですが、アンダーアイスの撮影は手がけたことがありませんでした。なので、この新しい挑戦に乗り出すことにワクワクしていたんです」。タグ・ホイヤーを初めとする様々なスポンサーからのかなりの支援を得て、このプロジェクトは数か月後に完成します。
挑戦なくして記録樹立なし
2021年、アルトゥールは厳しいトレーニングの後、水温2度のフィンランドのゾンナネン湖の氷の下でフィンもスーツもつけずに120mを泳ぎ、新たなベンチマークを打ち立てます。翌年、彼はカナダのモリソンズ・クワリーの極寒の湖水を制覇し、絶対的な新記録を樹立します。それが、フィンもスーツもつけず、水温0.7度のアンダーアイスを105mも泳いだというものでした。
なぜこの2か所が選ばれたかについては、「水面が凍った湖の下で記録を出す必要があり、そのような場所はめったにないことから、こうした場所が選ばれました」とアルトゥールは説明します。
言うまでもなく、凍えるように冷たい水温を克服するのは、恐ろしく手ごわい挑戦です。「氷のような水温は、対処するのが最も難しい要素でした」とアルトゥールは言います。
ル・フォーシュール監督も次のように言い添えます「私たちにとって、この強烈な冷たさを観る人に伝えることが目標でした。モトクロスライダーが25mのジャンプをしたり、スノーボーダーが巨大な山を滑り降りたり、サーファーがハワイでビッグウェーブを捉えたりするのは視覚的には印象的ですが、氷点下近い水の中に身を沈める純粋な残酷さを伝えるのはまた別の難題です」。
時間と密接に結びついた競技
酸素を奪われながら氷点下に近い温度の水の中を進むことは、フリーダイバーの時間の認識を歪めます。アルトゥールは言います。「時間を引きずろうが、飛び越えようが、それは、時間を体験することなのです。この時間との本質的な関連性が、時計製造をフリーダイビングと深く結びつけています。」 彼は無呼吸遊泳には、時間が加速するように感じる最初の快適な段階、長く苦しい中間段階、そして再び時間が加速する最終段階の3段階があると説明します。
ル・フォーシュール監督も言います。「時間は映画のバックボーンとなる重要なものです。このテーマは、特にタイマーとアルトゥールの準備運動の中で繰り返し登場します。」
さらなる新記録を目指しているのかという質問にアルトゥールはこう答えてくれました。「どうしてもやらなければならないほどの理由は見つかりません。こうした挑戦が命を危険にさらすものであることを忘れてはなりません」。今後の展開がどうなるかはまだ不透明ですが、ひとつだけ否定できないことがあります。それが、映画『SUNNY BOY』を生み出したプライド。「私がALMOフィルムで撮った十数本のドキュメンタリーの中でも、この作品は映画的に最も洗練された作品のひとつとして際立った存在感を放っています」。この映像美を体験するには、フランスの場合は、3月28日から動画配信プラットフォームにアクセス。また、Apple TVでの視聴も可能です。